岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

アカデミー外国語映画賞に輝くチリ映画

2018年04月03日

ナチュラルウーマン

©2017 ASESORIAS Y PRODUCCIONES FABULA LIMITADA; PARTICIPANT PANAMERICA, LCC; KOMPLIZEN FILM GMBH; SETEMBRO CINE, SLU; AND LELIO Y MAZA LIMITADA

【出演】ダニエラ・ヴェガ、フランシスコ・レジェス、ルイス・ニェッコ
【監督・脚本】セバスティアン・レリオ

逆風に立ち向かうありのまま私

 オルランドは服飾系の会社を経営する初老の男。失くし物をしたのか、車の中を探したり、秘書に尋ねたりするが、“白い大きな封筒” は見つからない。ナイトクラブで唄うマリーナ。妖艶で美しい歌声。それを見つめるオルランド。ふたりはレストランでテーブルを囲み、サプライズ演出で運ばれてくるケーキにはしゃぐ。マリーナの誕生日のお祝い。年齢差はあるけれど、熱愛中であることが分かる。オルランドから差し出される小さな封筒。イグアスの滝への招待状が、手書きのメモで書かれている。お祝いに用意した旅行の切符を失くしてしまったことを、照れくさそうに告白するオルランド。この後起こる悲劇の予兆だったのか?
 その夜中、オルランドは体調不良を訴える。病院に運び込まれるが、あっけなく逝ってしまう。突然の哀しみに打ちひしがれ、病院を出てふらふらと街をさまようマリーナ。
 昨年公開された『彼らが本気で編むときは、』(荻上直子監督)は、トランスジェンダーであることを受け入れている平常心のカップルを描いた日本映画。近頃、テレビドラマでも、トランスジェンダーや女装、ゲイカップルが抵抗なく登場するようになり、それなりの変化を感じるようになったのも確かなことだが、さまざまな困難があることも現実で、奇異のものを見る視線や、差別的な扱いが解消されたとは言い難い。
 マリーナがトランスジェンダーであることはすぐにわかる。それは彼女がありのままの自分を素直にさらけ出すことでもある。最愛の人であったオルランド亡き後の喪失感の傷みが癒えない中、彼女を受け入れようとしない人々からの仕打ちはあまりに痛い。その逆風に立ち向かうマリーナのたくましい姿は、彼女の唄う美しいソプラノで美へと昇華される。マリーナのまわりにはよき理解者もいるが、自分らしく生きたいという願いは、自らが切り開くしかない。その妥協なき姿は崇高だ! そう言えば、オルランドが失くした封筒は?

『ナチュラルウーマン』は全国で公開中。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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