岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品すべてうまくいきますように B! 「死ぬ権利」は自己決定できるのか? 2023年03月13日 すべてうまくいきますように © 2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES 【出演】ソフィー・マルソー、アンドレ・デュソリエ、ジェラルディーヌ・ペラス、シャーロット・ランプリング、ハンナ・シグラ、エリック・カラヴァカ、グレゴリー・ガドゥボワ 【監督・脚本】フランソワ・オゾン 死にに行くのに涙も湿っぽさもない 本作を語るにあたり、まずは用語を整理してみたい。「尊厳死(消極的安楽死)」-延命治療を施さずに自然な最期を迎えること。苦痛をやわらげる緩和ケアはする。「積極的安楽死」-注射や内服薬の投与を行って、人為的に死期を早めること。 本作は10数か国を除いては犯罪とされる「積極的安楽死」を扱った映画だ。 スイスにおける「死ぬ権利」は、昨年9月のゴダール監督が選択したことで私も知ることとなったが、2021年には年間1,500人超が「自殺ほう助」を受けているということ。スイスでも「積極的安楽死」は法律で禁止されているが、医師から処方された致死薬を患者本人が体内に取り込んで死亡する「自殺ほう助」は認められていて、本作にも出てくるような支援団体も複数あるらしい。 私はまだまだ欲が深く、へこんだり落ち込んだりしても「死ななきゃいい」と考える方なので、還暦を過ぎても死を意識したことは無いし、85歳の主人公アンドレ(アンドレ・リュソリエ)のように身体の自由がきかなくなったくらいでは、「死のう」とは思わないだろう。 娘の小説家エマニュエル(ソフィー・マルソー)だって困ったに違いない。芸術や美食を楽しみ、ユーモアと好奇心にあふれ、同性愛関係の友人までおり、自由奔放であまり家庭を顧みなかったであろう父のわがままは本気なのかどうか?ことは生きるか死ぬかなのだから、責任を取れるわけがない。 映画の途中で出てくるパーキンソン病にかかって何もものを言わない彫刻家の母(シャーロット・ランプリング)が気の毒でしょうがないのだ。 アンドレの選択は家族に最後まで迷惑かけっぱなしだと思うが、実は羨ましくもある。本当の意味での人生の終活を、楽しみながら過ごしていく。死にに行くのに涙も湿っぽさもなく、「さらばじゃ」てな感じでスイスに赴く。 フランソワ・オゾン監督は当年55歳。死への恐怖を若干やわらげてくれた。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (10)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年04月24日 / ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター 4Kで甦る 憎悪の泥に塗れた官能的な愛の物語 2024年04月24日 / ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター ジェーン・カンピオン監督の最高傑作、完璧な作品 2024年04月24日 / RED SHOES/レッド・シューズ オーストラリア発バレエ舞台の成長物語 more 2019年01月16日 / 高田世界館(新潟県) 明治44年の建築当時のまま…登録有形文化財の映画館 2020年02月05日 / 福知山シネマ(京都府) 城下町にある映画館は幅広い年代から支持されている 2022年06月08日 / プラット赤穂シネマ(兵庫県) 日常の中に映画館で映画を観る習慣が甦った街 more
死にに行くのに涙も湿っぽさもない
本作を語るにあたり、まずは用語を整理してみたい。「尊厳死(消極的安楽死)」-延命治療を施さずに自然な最期を迎えること。苦痛をやわらげる緩和ケアはする。「積極的安楽死」-注射や内服薬の投与を行って、人為的に死期を早めること。
本作は10数か国を除いては犯罪とされる「積極的安楽死」を扱った映画だ。
スイスにおける「死ぬ権利」は、昨年9月のゴダール監督が選択したことで私も知ることとなったが、2021年には年間1,500人超が「自殺ほう助」を受けているということ。スイスでも「積極的安楽死」は法律で禁止されているが、医師から処方された致死薬を患者本人が体内に取り込んで死亡する「自殺ほう助」は認められていて、本作にも出てくるような支援団体も複数あるらしい。
私はまだまだ欲が深く、へこんだり落ち込んだりしても「死ななきゃいい」と考える方なので、還暦を過ぎても死を意識したことは無いし、85歳の主人公アンドレ(アンドレ・リュソリエ)のように身体の自由がきかなくなったくらいでは、「死のう」とは思わないだろう。
娘の小説家エマニュエル(ソフィー・マルソー)だって困ったに違いない。芸術や美食を楽しみ、ユーモアと好奇心にあふれ、同性愛関係の友人までおり、自由奔放であまり家庭を顧みなかったであろう父のわがままは本気なのかどうか?ことは生きるか死ぬかなのだから、責任を取れるわけがない。
映画の途中で出てくるパーキンソン病にかかって何もものを言わない彫刻家の母(シャーロット・ランプリング)が気の毒でしょうがないのだ。
アンドレの選択は家族に最後まで迷惑かけっぱなしだと思うが、実は羨ましくもある。本当の意味での人生の終活を、楽しみながら過ごしていく。死にに行くのに涙も湿っぽさもなく、「さらばじゃ」てな感じでスイスに赴く。
フランソワ・オゾン監督は当年55歳。死への恐怖を若干やわらげてくれた。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。