岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品銀平町シネマブルース B! 城定秀夫×いまおかしんじ、夢のタッグ 2023年02月20日 銀平町シネマブルース ©2022「銀平町シネマブルース」製作委員会 【出演】小出恵介、吹越満、宇野祥平、藤原さくら、日高七海、中島歩、黒田卓也、木口健太、小野莉奈、平井亜門、守屋文雄、関町知弘(ライス)、小鷹狩八、谷田ラナ、さとうほなみ、加治将樹、片岡礼子、藤田朋子/浅田美代子、渡辺裕之 【監督】城定秀夫 ファンにはたまらない優しい映画 2022年、共に4本の監督作を発表し、いずれもその高い完成度に圧倒された2人、城定秀夫といまおかしんじがタッグを組んだのが本作だ。城定氏は他に脚本担当作が2本、いまおか氏は1本あり、こちらも素晴らしい出来。そのスピードと才能、そして職人技には改めて驚嘆するとともに本作への期待値は自然と上がっていった。そしてスクリーンで対面した作品は見事その期待に応えてくれた。いや、これはズルい。こんなにも優しさと映画愛で満たされていれば好きになってしまうではないか。 主人公はある事情から借金を背負った行くあてのない男、近藤猛(小出恵介)。ふとしたことからたどり着いた廃業寸前の映画館で様々な人とふれあっていく。支配人の梶原(吹越満)や映画好きのホームレス佐藤(宇野祥平)、映写技師谷口(渡辺裕之)、常連さんにスタッフ…。みんな映画が好きで、たとえ相手がどんな人でもそれだけで繋がっていられる。映画とはそんな人と人との架け橋になる。そしてそんな人たちとの繋がりの中で近藤の過去と現在までも繋がっていく。あぁ映画っていいものだなぁ…。そんな気持ちにさせてくれること請負だ。 いまおかしんじの紡ぎ出す脚本はいくつもの優しさに満ちていて、決して弱者を否定しない。たとえどんな人でもどんな人生でも寄り添ってくれる。時にユーモラスに、時にもの悲しく人生の1ページを描写する。それぞれの想いがワンシーンですべて発露するイベント当日のロビーから突っ走る喜びと悲しみのジェットコースターに感情が揺さぶられる。出来過ぎといわれるかもしれないが、映画だからいいじゃない。 城定秀夫はそんな脚本を正攻法で描いていく。基本的にはフィックス(固定)を用いて、カメラワークもブレを抑えるように配慮されている。カット割りもロングのあとにアップを繋いだり、極端なアングルが避けられていたりと破綻がない。だからこそ際立つ脚本の優しさ。この脚本に最適なアプローチがなされているあたり、さすが職人だ。とは言いつつ、単調な画が続くのかといえばそうではない。たまにハッとするほど美しいロングショットが挿入されたかと思えば、ここぞというタイミングでの数少ない手持ちカメラ。メガネっ子の登場や女性キャラクターの魅力があふれているところなどは、しっかり城定秀夫監督作。 映画として観れば城定秀夫、いまおかしんじ共に本作より好きな映画も完成度の高い映画もある。ただ映画ファンにとって、両名のファンにとってたまらない映画であることもまた事実。観ている間、楽しめたのだからそれでいい。むしろそれがいい。 語り手:天野 雄喜 中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。 100% 観たい! (8)検討する (0) 語り手:天野 雄喜 中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。 2024年04月24日 / ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター 4Kで甦る 憎悪の泥に塗れた官能的な愛の物語 2024年04月24日 / ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター ジェーン・カンピオン監督の最高傑作、完璧な作品 2024年04月24日 / RED SHOES/レッド・シューズ オーストラリア発バレエ舞台の成長物語 more 2020年08月19日 / 大心劇場(高知県) 高知の山奥にポツンと佇む懐かしの映画館 2022年07月13日 / 吉祥寺オデヲン(東京都) いつも住みたい街に選ばれる吉祥寺駅前にある街のシンボル 2021年07月28日 / 【思い出の映画館】上野東宝劇場/上野宝塚劇場(東京都) 文人墨客が愛した上野の森にあった東宝直営館 more
ファンにはたまらない優しい映画
2022年、共に4本の監督作を発表し、いずれもその高い完成度に圧倒された2人、城定秀夫といまおかしんじがタッグを組んだのが本作だ。城定氏は他に脚本担当作が2本、いまおか氏は1本あり、こちらも素晴らしい出来。そのスピードと才能、そして職人技には改めて驚嘆するとともに本作への期待値は自然と上がっていった。そしてスクリーンで対面した作品は見事その期待に応えてくれた。いや、これはズルい。こんなにも優しさと映画愛で満たされていれば好きになってしまうではないか。
主人公はある事情から借金を背負った行くあてのない男、近藤猛(小出恵介)。ふとしたことからたどり着いた廃業寸前の映画館で様々な人とふれあっていく。支配人の梶原(吹越満)や映画好きのホームレス佐藤(宇野祥平)、映写技師谷口(渡辺裕之)、常連さんにスタッフ…。みんな映画が好きで、たとえ相手がどんな人でもそれだけで繋がっていられる。映画とはそんな人と人との架け橋になる。そしてそんな人たちとの繋がりの中で近藤の過去と現在までも繋がっていく。あぁ映画っていいものだなぁ…。そんな気持ちにさせてくれること請負だ。
いまおかしんじの紡ぎ出す脚本はいくつもの優しさに満ちていて、決して弱者を否定しない。たとえどんな人でもどんな人生でも寄り添ってくれる。時にユーモラスに、時にもの悲しく人生の1ページを描写する。それぞれの想いがワンシーンですべて発露するイベント当日のロビーから突っ走る喜びと悲しみのジェットコースターに感情が揺さぶられる。出来過ぎといわれるかもしれないが、映画だからいいじゃない。
城定秀夫はそんな脚本を正攻法で描いていく。基本的にはフィックス(固定)を用いて、カメラワークもブレを抑えるように配慮されている。カット割りもロングのあとにアップを繋いだり、極端なアングルが避けられていたりと破綻がない。だからこそ際立つ脚本の優しさ。この脚本に最適なアプローチがなされているあたり、さすが職人だ。とは言いつつ、単調な画が続くのかといえばそうではない。たまにハッとするほど美しいロングショットが挿入されたかと思えば、ここぞというタイミングでの数少ない手持ちカメラ。メガネっ子の登場や女性キャラクターの魅力があふれているところなどは、しっかり城定秀夫監督作。
映画として観れば城定秀夫、いまおかしんじ共に本作より好きな映画も完成度の高い映画もある。ただ映画ファンにとって、両名のファンにとってたまらない映画であることもまた事実。観ている間、楽しめたのだからそれでいい。むしろそれがいい。
語り手:天野 雄喜
中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。
語り手:天野 雄喜
中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。