岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品ベルイマン島にて B! 巨匠が愛した島で紡ぐひと夏の物語 2022年05月23日 ベルイマン島にて © 2020 CG Cinéma ‒ Neue Bioskop Film ‒ Scope Pictures ‒ Plattform Produktion ‒ Arte France Cinéma 【出演】ヴィッキー・クリープス、ティム・ロス、ミア・ワシコウスカ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー 【監督・脚本】ミア・ハンセン=ラブ きっとベルイマン映画が観たくなるとは言えないのが困りもの イングマール・ベルイマンを知っていますか? スウェーデン出身の映画監督イングマール・ベルイマンは、映画好きの中では避けて通ることのできない存在です。と、確信的なことを言うのは、ちょっと思い上がりかも知れない。その受け止め方は人それぞれ。でも、やっぱり、ベルイマンの作品に触れることで、それなりの意味や思いが発生することも、また確かな事。 映画監督のトニー(ティム・ロス)とクリス(ヴィッキーグリーブス)が、ベルイマンゆかりの地、フォーレ島へやって来るところから始まる。 フォーレ島は、スウェーデンの南東沖のバルト海に浮かぶ島で、夏のリゾート地として人気がある。そして、ベルイマンが創作の場としていたことで "ベルイマン島" とも呼ばれている。映画でも、トニーとクリスが宿泊するライブラリーのある場所まで行く道程で、島全体が見事にベルイマン印に観光化されていることがわかる。 トニーとクリスは、互いを尊重し合うパートナー関係で、それぞれのルーティーンがあり、創作の場には適度な距離が存在する。これが2人の心地よい関係性ではあるのだが、同時にそこに停滞感があることを読み取れる。 ふたりが宿泊する家は、『ある結婚の風景』(1974年スウェーデン国営放送製作のドラマ/日本での劇場版公開81年)が撮影された場所で、管理人は「離婚するカップルが増えた」と揶揄する。 後半、クリスが執筆中の脚本の展開をトニーに相談して、その内容を語り出すことで、映画中映画=別の物語が重構造となって進行する。それはクリス自身の実ることのなかった初恋を投影した内容なのだが、残念なのは些か唐突に思えることだ。 クリスの「穏やかで完璧過ぎて息が詰まる」という呟きは、場所に向けられた言葉であるのと同時に、ベルイマン作品にもあてはまる。激しくて繊細な『叫びとささやき』(1972/日本公開74年)。怖くて優しい『ファニーとアレクサンデル』(1982/日本公開85年)。現実と虚構の交錯…確かに映画とはそんなものかも知れない。 それにしてもこの島のベルイマン特化の観光化には驚いた。そして、対照的な悪口のささやきにも…。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (8)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年05月01日 / コットンテール 愛妻の遺言をかなえる旅を描いた英日合作 2024年05月01日 / コットンテール 最愛の人の遺言を叶えるための旅の物語 2024年05月01日 / コットンテール 湖水地方の風景が美しい、父と子との再生の映画 more 2017年12月21日 / 飯田トキワ劇場(長野県) 雄大な山々に囲まれたスモールタウンの映画館 2021年06月23日 / 【思い出の映画館】シアターホームラン(埼玉県) 小江戸・川越で映画の灯を守り続けた老舗劇場 2022年01月12日 / 静岡シネ・ギャラリー(静岡県) 静岡駅の近く…由緒あるお寺が運営する映画館 more
きっとベルイマン映画が観たくなるとは言えないのが困りもの
イングマール・ベルイマンを知っていますか?
スウェーデン出身の映画監督イングマール・ベルイマンは、映画好きの中では避けて通ることのできない存在です。と、確信的なことを言うのは、ちょっと思い上がりかも知れない。その受け止め方は人それぞれ。でも、やっぱり、ベルイマンの作品に触れることで、それなりの意味や思いが発生することも、また確かな事。
映画監督のトニー(ティム・ロス)とクリス(ヴィッキーグリーブス)が、ベルイマンゆかりの地、フォーレ島へやって来るところから始まる。
フォーレ島は、スウェーデンの南東沖のバルト海に浮かぶ島で、夏のリゾート地として人気がある。そして、ベルイマンが創作の場としていたことで "ベルイマン島" とも呼ばれている。映画でも、トニーとクリスが宿泊するライブラリーのある場所まで行く道程で、島全体が見事にベルイマン印に観光化されていることがわかる。
トニーとクリスは、互いを尊重し合うパートナー関係で、それぞれのルーティーンがあり、創作の場には適度な距離が存在する。これが2人の心地よい関係性ではあるのだが、同時にそこに停滞感があることを読み取れる。
ふたりが宿泊する家は、『ある結婚の風景』(1974年スウェーデン国営放送製作のドラマ/日本での劇場版公開81年)が撮影された場所で、管理人は「離婚するカップルが増えた」と揶揄する。
後半、クリスが執筆中の脚本の展開をトニーに相談して、その内容を語り出すことで、映画中映画=別の物語が重構造となって進行する。それはクリス自身の実ることのなかった初恋を投影した内容なのだが、残念なのは些か唐突に思えることだ。
クリスの「穏やかで完璧過ぎて息が詰まる」という呟きは、場所に向けられた言葉であるのと同時に、ベルイマン作品にもあてはまる。激しくて繊細な『叫びとささやき』(1972/日本公開74年)。怖くて優しい『ファニーとアレクサンデル』(1982/日本公開85年)。現実と虚構の交錯…確かに映画とはそんなものかも知れない。
それにしてもこの島のベルイマン特化の観光化には驚いた。そして、対照的な悪口のささやきにも…。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。