岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

愛妻の遺言をかなえる旅を描いた英日合作

2024年05月01日

コットンテール

©️2023 Magnolia Mae/ Office Shirous 

【出演】リリー・フランキー、錦戸亮、木村多江、高梨臨/恒松祐里、工藤孝生/イーファ・ハインズ & キアラン・ハインズ
【監督・脚本】パトリック・ディキンソン

父親と息子の関係修復のドラマでもある

「コットンテール」は、リリー・フランキーと木村多江が橋口亮輔監督の傑作「ぐるりのこと。」以来の夫婦役で共演した作品。日本映画通と言われるパトリック・ディキンソン監督だからこそのキャスティングと言えそうだ。

妻・明子(木村多江)を亡くした主人公・兼三郎(リリー・フランキー)が、彼女が子どもの頃に好きだった「ピーター・ラビット」の発祥地であるイギリスのウィンダミア湖に散骨して欲しいという遺言をかなえるため、疎遠だった息子一家とイギリスに旅立つストーリーで、兼三郎と明子の出会いや明子の闘病生活等の回想シーンがインサートされる。

上映時間94分の短い作品で、明子の病気や兼三郎と息子・彗(錦戸亮)が疎遠になった理由は詳しくは説明されない。観客が想像力で余白を埋めるように作られていて、説明過多の日本のテレビドラマとは対照的。

旅を描いた映画には珍しく風景を描いたシーンは少なく、カメラは主人公に寄り添い続けロングよりアップが圧倒的に多い。

主人公の独り善がりな無鉄砲な行動が、彼の性格を見事に反映していて、リリー・フランキーも好演している。

2年前に日本で公開されたイギリス映画の秀作「君を想い、バスに乗る」も、愛する妻の遺骨を彼女と出会った場所に散骨するため、主人公がスコットランド最北端の村からイギリス最南端の岬までイギリス横断の旅をする作品であったが映画の印象はまるで異なる。主人公の性格の違いもあるが、「コットンテール」は父親と息子の関係修復のドラマでもあるからだろう。

監督・脚本のパトリック・ディキンソンは英国アカデミー賞US学生映画賞と学生エミー賞を受賞した映画作家で、溝口健二監督作品を筆頭にかなりの日本映画ファンであるらしい。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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