岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

最愛の人の遺言を叶えるための旅の物語

2024年05月01日

コットンテール

©️2023 Magnolia Mae/ Office Shirous 

【出演】リリー・フランキー、錦戸亮、木村多江、高梨臨/恒松祐里、工藤孝生/イーファ・ハインズ & キアラン・ハインズ
【監督・脚本】パトリック・ディキンソン

出会いのきっかけは?寿司屋はない ハグはしない 罪と罰?

ビルの屋上。男が煙草を燻らせている。何処を見るでもなく、虚ろな視線が彷徨う。

意を決したように出立する男。世間に逆らうような歩み。

たどり着いた市場の魚屋で "万引き" した男は、準備中の寿司屋のカウンターに座り、手に入れた蛸を店主に任せる。

手酌で注いだビールを誰もいない隣席に置く…無言の乾杯のように見える。出来上がった蛸の握りを頬張る。店主は男の妻の不在について問う…。

過去。同じ寿司屋のカウンターに座っている若き日の男。そこに暖簾をくぐって来る若い女性がいる。待ち合わせ?これが初対面であるのか?ぎこちない会話が交わされる。男と女の出会い。

この後、部屋に帰った男のもとに。ガラケーに着信を繰り返していた "トシ" がやって来て、電話に出ない、事の準備もしていないことを責める。 ふたりが親子であることがわかり、母、男にとっての妻の葬儀がおこなわれることがわかる。

『コットンテール』は、妻(女)=明子(木村多江)の喪失の哀しみに直面した男=兼三郎(リリー・フランキー)と、ひとり息子トシ=彗(錦戸亮)が、遺言の望みを叶えるため、明子の思い出の地、イングランドのウィンダミア湖へ向かう、ロードムービーに移行する。

葬儀のあと、ロンドンに到着した、兼三郎と彗の家族(妻のさつきと孫のエミ)との間には、相変わらずのぎごちなさが存在する。

物語の進行には、若き日のふたりの他にも、明子が病(若年性認知症?)を発症した頃が回想として挿入される。次第に悪化する症状は、徘徊から痛みに進行する。

一見、語口は豊かに思えるが、人間関係の核心的な "綾" は見えてこない。

もうひとつ気になるのが兼三郎の独善的な行動である。喪失の哀しみにあるが故の盲目的な暴走?とも言い切れない、いくつかには疑問が重くのしかかる。親子の確執の理由は?

印象的なシーンが所々にあるが、曖昧な不明の澱がわだかまりとなって晴れないのは辛い。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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