岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品ナイル殺人事件 B! 異国情緒が愛憎の血に染るクリスティミステリーの傑作 2022年02月28日 ナイル殺人事件 © 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved. 【出演】ケネス・ブラナー、ガル・ガドット、アーミー・ハマー、アネット・べニング 【監督】ケネス・ブラナー 華麗で重厚なブラナー演出 闊達自在なポアロ像の完成 アガサ・クリスティは85年の生涯で、66の長編小説と100を超える中短編小説を発表した。その作品の多くは推理小説で、広く世界中で読まれ、ベストセラーとなり、彼女は "ミステリーの女王" と呼ばれることになった。映画化、映像化された作品も多く、物語を牽引する探偵たちの魅力あふれる個性は、映像として出現することで、より顕著なカリスマ性を獲得することになった。 『ナイル殺人事件』の探偵エルキュール・ポワロは、33の長編と54の短編、1つの戯曲に登場し、もう1人の探偵ミス・マープルと並び、"クリスティ・ミステリー" を代表する看板探偵となっている。 最初の映像化は1978年で、監督はジョン・ギラーミン、ポアロはピーター・ユスチノフが演じている。 その少し前、74年には『オリエント急行殺人事件』が、シドニー・ルメット監督、アルバート・フィニーのポワロ役で映画化されている。 本作はケネス・ブラナーが監督、ポワロ役を務めているが、これは2017年の『オリエント急行殺人事件』を継ぐかたちで制作され、脚本も両作ともマイケル・グリーンが手がけるなど、他の主要スタッフも多くが継承されている。 この2作のローテーションは前回とよく似ているが、続編という関係性はない。あえて共通するのは、異国情緒が醸しだす旅情性かもしれない。 まず、エピローグ…ポアロの若き日、従軍時代が描かれる。モノクロ映像の贅沢で壮絶な戦闘シーン。これは、ちょっとした隠し味。 あまりに有名な小説、それがミステリー小説となれば、そのファンは結末を承知している。映画化はこの事実との闘いでもある。そして、もうひとつ、あまりにも有名な探偵ポアロの存在が立ちはだかる。 ケネス・ブラナーは少し毛色は違うが、シェイクスピアの諸作の映画化に手を染めた人であるから、今回も確信犯的な挑戦が随所に現れる。 事件の現場=舞台となるナイル川豪華遊覧船をなめるような華麗な移動撮影で見せたり、サディスティックなポアロの容赦ない尋問、それを切れ目なく繋げスピーディーな展開を重視する。ブラナーの円熟の演出が随所で堪能できる娯楽大作である。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (8)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年05月01日 / コットンテール 愛妻の遺言をかなえる旅を描いた英日合作 2024年05月01日 / コットンテール 最愛の人の遺言を叶えるための旅の物語 2024年05月01日 / コットンテール 湖水地方の風景が美しい、父と子との再生の映画 more 2017年12月21日 / 飯田トキワ劇場(長野県) 雄大な山々に囲まれたスモールタウンの映画館 2023年05月17日 / シネシティザート(静岡県) 晴れた日には富士山が見えるロビーがあるシネコン。 2021年10月27日 / 【思い出の映画館】西尾劇場(愛知県) 愛知県郊外の映画館でギュウギュウ詰めで映画を楽しむ。 more
華麗で重厚なブラナー演出 闊達自在なポアロ像の完成
アガサ・クリスティは85年の生涯で、66の長編小説と100を超える中短編小説を発表した。その作品の多くは推理小説で、広く世界中で読まれ、ベストセラーとなり、彼女は "ミステリーの女王" と呼ばれることになった。映画化、映像化された作品も多く、物語を牽引する探偵たちの魅力あふれる個性は、映像として出現することで、より顕著なカリスマ性を獲得することになった。
『ナイル殺人事件』の探偵エルキュール・ポワロは、33の長編と54の短編、1つの戯曲に登場し、もう1人の探偵ミス・マープルと並び、"クリスティ・ミステリー" を代表する看板探偵となっている。
最初の映像化は1978年で、監督はジョン・ギラーミン、ポアロはピーター・ユスチノフが演じている。
その少し前、74年には『オリエント急行殺人事件』が、シドニー・ルメット監督、アルバート・フィニーのポワロ役で映画化されている。
本作はケネス・ブラナーが監督、ポワロ役を務めているが、これは2017年の『オリエント急行殺人事件』を継ぐかたちで制作され、脚本も両作ともマイケル・グリーンが手がけるなど、他の主要スタッフも多くが継承されている。
この2作のローテーションは前回とよく似ているが、続編という関係性はない。あえて共通するのは、異国情緒が醸しだす旅情性かもしれない。
まず、エピローグ…ポアロの若き日、従軍時代が描かれる。モノクロ映像の贅沢で壮絶な戦闘シーン。これは、ちょっとした隠し味。
あまりに有名な小説、それがミステリー小説となれば、そのファンは結末を承知している。映画化はこの事実との闘いでもある。そして、もうひとつ、あまりにも有名な探偵ポアロの存在が立ちはだかる。
ケネス・ブラナーは少し毛色は違うが、シェイクスピアの諸作の映画化に手を染めた人であるから、今回も確信犯的な挑戦が随所に現れる。
事件の現場=舞台となるナイル川豪華遊覧船をなめるような華麗な移動撮影で見せたり、サディスティックなポアロの容赦ない尋問、それを切れ目なく繋げスピーディーな展開を重視する。ブラナーの円熟の演出が随所で堪能できる娯楽大作である。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。