岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品世界で一番美しい少年 B! ある少年の数奇な運命を見つめたドキュメンタリー 2022年01月31日 世界で一番美しい少年 © Mantaray Film AB, Sveriges Television AB, ZDF/ARTE, Jonas Gardell Produktion, 2021 【出演】ビョルン・アンドレセン 【監督】クリスティーナ・リンドストロム & クリスティアン・ペトリ 日本での活躍の記憶は映画で認識するずっと前の事 『ベニスに死す』を監督したルキノ・ヴィスコンティは、1906年イタリア・ミラノに生まれた。生家は北イタリア有数の貴族モドローネ公爵で、幼少期は14世紀に建てられたお城で暮らし、芸術は常に身近にあったと想像できる。 1926年から2年間の従軍後、舞台俳優、兼デザイナーとして働きはじめ、1936年、ココ・シャネルの紹介でジャン・ルノワールと出会い、助監督などをして映画界に関わるようになった。 1943年、監督デビュー作『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(原題『妄執』)を発表したが、日本で公開されるのは1979年になってからのことだった。 第二次世界大戦中は、イタリア共産党に入党していたこともあり、若き日のヴィスコンティは、"赤い公爵" と揶揄されるが、イタリアン・ネオリアリズモを代表する映画作家と評価された。 今年、7月にその歴史に幕を閉じることが発表された東京神保町にある岩波ホールは、1974年からミニシアターの草分けとして、世界各地の埋もれた名作映画を上映してきた。その岩波ホールで1978年、ヴィスコンティが74年に発表した『家族の肖像』が公開され大ヒットとなる。これは "ヴィスコンティ・ブーム" の火付けとなり、未公開になっていた旧作から、代表作のリバイバル公開が続いた。 ヴィスコンティはその2年前の76年に69歳で亡くなっていたが、巨匠の全貌は漸くにして日本にも届いた。 『世界で一番美しい少年』は『ベニスに死す』のタジオ役のオーディションからはじまる。 作曲家のアッシェンバッハが、ベニスで出会い次第に魅了される、圧倒的な美の象徴であるべき少年。 タジオ探しの旅は難航したと説明される。 オーディションの記録のための荒れた映像。スウェーデンに住む15歳のビョルン・アンドレセン…俳優やモデルになるという野心などないうぶな少年は、子鹿のような眼で少し怯えている様に見える。 映画は運命に翻弄され堕ちてゆく美の肖像を時の残酷さに重ねて炙り出す。芸術誕生の仮借なき刃は、少年の繊細な心を蝕む。 日本での活動時の映像が、空白の記憶のパズルを埋めてくれた。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (13)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年05月01日 / コットンテール 愛妻の遺言をかなえる旅を描いた英日合作 2024年05月01日 / コットンテール 最愛の人の遺言を叶えるための旅の物語 2024年05月01日 / コットンテール 湖水地方の風景が美しい、父と子との再生の映画 more 2019年05月22日 / ガーデンズシネマ(鹿児島県) 映画の後にランチをしながら、おしゃべりを楽しむ 2018年10月17日 / シネ・ヌーヴォ(大阪府) 薔薇をモチーフとした外観が目印の映画館 2020年02月19日 / 笠間ポレポレホール(茨城県) 休日の朝、家族揃って映画を観る…そんな街の映画館 more
日本での活躍の記憶は映画で認識するずっと前の事
『ベニスに死す』を監督したルキノ・ヴィスコンティは、1906年イタリア・ミラノに生まれた。生家は北イタリア有数の貴族モドローネ公爵で、幼少期は14世紀に建てられたお城で暮らし、芸術は常に身近にあったと想像できる。
1926年から2年間の従軍後、舞台俳優、兼デザイナーとして働きはじめ、1936年、ココ・シャネルの紹介でジャン・ルノワールと出会い、助監督などをして映画界に関わるようになった。
1943年、監督デビュー作『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(原題『妄執』)を発表したが、日本で公開されるのは1979年になってからのことだった。
第二次世界大戦中は、イタリア共産党に入党していたこともあり、若き日のヴィスコンティは、"赤い公爵" と揶揄されるが、イタリアン・ネオリアリズモを代表する映画作家と評価された。
今年、7月にその歴史に幕を閉じることが発表された東京神保町にある岩波ホールは、1974年からミニシアターの草分けとして、世界各地の埋もれた名作映画を上映してきた。その岩波ホールで1978年、ヴィスコンティが74年に発表した『家族の肖像』が公開され大ヒットとなる。これは "ヴィスコンティ・ブーム" の火付けとなり、未公開になっていた旧作から、代表作のリバイバル公開が続いた。
ヴィスコンティはその2年前の76年に69歳で亡くなっていたが、巨匠の全貌は漸くにして日本にも届いた。
『世界で一番美しい少年』は『ベニスに死す』のタジオ役のオーディションからはじまる。
作曲家のアッシェンバッハが、ベニスで出会い次第に魅了される、圧倒的な美の象徴であるべき少年。
タジオ探しの旅は難航したと説明される。
オーディションの記録のための荒れた映像。スウェーデンに住む15歳のビョルン・アンドレセン…俳優やモデルになるという野心などないうぶな少年は、子鹿のような眼で少し怯えている様に見える。
映画は運命に翻弄され堕ちてゆく美の肖像を時の残酷さに重ねて炙り出す。芸術誕生の仮借なき刃は、少年の繊細な心を蝕む。
日本での活動時の映像が、空白の記憶のパズルを埋めてくれた。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。