岐阜新聞 映画部

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35年前の消えた真相を求めて捜し歩く、音楽ミステリー

2022年01月26日

天才ヴァイオリニストと消えた旋律

© 2019 SPF (Songs) Productions Inc., LF (Songs) Productions Inc., and Proton Cinema Kft

【出演】ティム・ロス、クライヴ・オーウェン、ルーク・ドイル、ミシャ・ハンドリー、キャサリン・マコーマック
【監督】フランソワ・ジラール

3つの時代を、観客に混乱させることなく描き分ける

本作を見てから知ったことだが、20世紀の巨匠と呼ばれるヴァイオリニストにはユダヤ人が多いらしい。漂泊の民であったユダヤ系の人々にとって、ヴァイオリンは旅の慰めとして常に身近にある楽器で、親たちはこぞって子どもたちにヴァイオリンを習わせたそうだ。

さらに芸術的才能に恵まれたユダヤ人子弟は、優れた教師から本格的な指導を受けられるコミュニティぐるみの教育支援システムがあり、第2次大戦後に世界を席巻するようになったということだ。

本作は、デビューコンサートを無断ですっぽかした当時21歳のユダヤ人ヴァイオリニスト・ドヴィドルを、幼馴染のマーティンが、35年の月日を経て、消えた真相を求めて捜し歩く音楽ミステリーだ。

映画は1986年を軸に、素人探偵もどきのマーティン(ティム・ロス=中年期)が、一人また一人と記憶や証言を積み重ねて推理し、行方知らずのドヴィドル(クライヴ・オーウェン=中年期)を見つけ出すいう王道パターン。

ここに1940年代前半の、マーティン一家に生意気で鼻っ柱の強いドヴィドルが加わる少年期。第2次大戦後のイスラエル建国から1951年の失踪までの青年期の回想が、思い出として語られていく。

フランソワ・ジラール監督は、3つの時代を観客に混乱させることなく描きわけ、さらにヴァイオリンの名演奏で優雅に彩っていく。見ていてストレスは全く感じず、スクリーンに身を任せるままだ。

マーティンとドヴィドルは、それぞれ3人の俳優が演じ分けていて違和感はない。中でもドヴィドルの少年期を演じたルーク・ドイル君は本物のヴァイオリニストだそうで、見事な配役だ。

原題は「The Song of Names(名前たちの歌)」。感動しどころがズバリ題名となっていて、ネタバレギリギリ。『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』は会心の邦題だ。

次々出てくるホロコーストものの秀作の一つである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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