岐阜新聞 映画部

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絵画は誰のものなのか?取引実態を克明に記録したドキュメンタリー

2021年04月05日

レンブラントは誰の手に

©2019DiscoursFilm

【出演】ヤン・シックス、エリック・ド・ロスチャイルド男爵、ターコ・ディビッツ、エルンスト・ファン・デ・ウェテリンク教授、バックルー公爵
【監督・脚本】ウケ・ホーヘンダイク

絵画の世界は奥が深く、人間の感情は複雑だ

 本作は、レンブラントの絵画を読み解いたり彼の実像に迫ったわけではない。レンブラントに魅せられた現代の人々の悲喜こもごもを、当事者に深く潜入し克明に記録していった、スリリングなドキュメンタリー映画である。

 2018年5月、オランダの画商ヤン・シックス氏は、競売でおよそ11万ポンド(約1600万円)で落札した「若い紳士の肖像」が、実はレンブラントの真作だったと公表し、一躍画商界の寵児となった。

 人知れず所蔵されていた身元不明の絵画を、高名な画家の知られざる傑作と見抜き、安価で手に入れたというロマン。

 ヤン・シックス氏に密着するウケ・ホーヘンダイク監督のカメラは、彼が世界の美術界を驚かせ大騒動に発展した、44年ぶりのレンブラントの真作発見に至る迄の過程を克明に捉えていく。

 クリスティーズの目録段階で、直感的に「レンブラントの本物」と見抜いた知識と鑑識眼。絵画を所有してから本物かどうかを検証していくアプローチ。

 さらにこういう大発見に付いて回るであろう、他の画商や顧客・専門家とのプライドや嫉妬・やっかみなどからくるぶつかり合い。映画はそんなシーンもしっかり捉えていく。人間の感情は複雑なのだ。

 ちなみにこの絵は、コロナの影響でまだ売られておらず、ロンドンで保管中とのことだ。

 また聖書のシーンを描いた作者不明の絵画の上塗り部分を慎重に剝がしていって、レンブラントの初期作と判明する過程もすこぶる面白い。

 ロスチャイルド家が売りに出した一対の夫婦の肖像画「マールテンとオープイェ」を巡る、フランスとオランダの争奪戦も大変愉快だ。意地の張り合いは、結局共同購入・交互展示で妥結するが、「絵画は誰のものなのか」と考えさせられる。

 個人でレンブラントを所有する貴族が、その絵画「読書をする老婆」を家族の一員のように"彼女"と呼んでいるシーンも微笑ましい。

 絵画の世界は奥深いのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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