岐阜新聞 映画部

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庶民派大統領の光と影のドキュメンタリー

2020年06月14日

世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ

©CAPITAL INTELECTUAL S.A, RASTA INTERNATIONAL, MOE

【出演】ホセ・ムヒカ、ルシア・トポランスキー、エレウテリオ・フェルナンデス=ウイドブロ、マウリシオ・ロセンコフ
【監督】エミール・クストリッツァ

笑顔に隠された凄い過去に驚愕

 南米に位置するウルグアイは人口345万人の小国で、人の数より牛の数の方が多い。その国の第40代大統領に就任したのはホセ・ムヒカ。ふっくらとした体躯、無造作に乱れた頭髪はほとんど白髪で、長い眉毛や口髭にも白いものが目立つ。

 ムヒカは1935年5月20日、ウルグアイの首都モンテビデオの郊外に生まれた。10代の頃から政治活動を始めたとされている。映画はそのムヒカを追ったドキュメンタリーだが、笑顔を絶やさない柔和な雰囲気の裏側、その波乱万丈の生涯が少しずつ明らかになる。

 監督は旧ユーゴスラビア出身のエミール・クストリッツァで、フランス滞在中にトラクターを運転する大統領がいる、という話を知り合いから聞いたことが映画化のきっかけだった。その後、ホセ・ムヒカ大統領の写真を見た監督は、世界中で彼だけが腐敗していない政治家だと直感したと述懐している。撮影を開始したのは、任期満了は翌年に控えた2014年の事だった。

 1960年、キューバに渡ったムヒカはチェ・ゲバラの演説に強い感銘を受ける。帰国してからは、当時のウルグアイ政府に反対する非合法組織に参加している。所謂ゲリラ活動をしていたわけで、64年、29歳の時に工場を襲撃して初めて逮捕された。その後も刑務所への収監、再逮捕、脱獄を経て、72年の4度目の投獄による刑務所生活は13年に及び、解放されたのは1985年、ムヒカ49歳の時だった。

 94年、左派政治団体を結成し、下院議員選に出馬し初当選。99年には上院議員に、2005年には農牧水産大臣として初入閣している。09年の大統領選挙では50%強の得票を獲得して当選。翌年3月に第40代大統領に就任した。農業の技術振興、再生エネルギーへの投資、観光化に力を注ぐ一方、中絶合法化、同性婚合法化、大麻合法化といった革新的な政策も実践した。

 政治家は、支持してくれる圧倒的な数の庶民の目線のままでいなければならない。映画は愚直なまでにこの真実を語る。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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