岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品草間彌生∞INFINITY B! 世界の草間彌生の水玉の秘密 2020年01月10日 草間彌生∞INFINITY Artist Yayoi Kusama drawing in KUSAMA - INFINITY. © Tokyo Lee Productions, Inc. Courtesy of Magnolia Pictures. 【出演】草間彌生 ほか 【監督・脚本・プロデューサー】ヘザー・レンズ 少女が描いた絵は母に破り捨てられた 草間彌生は「水玉の女王」と呼ばれる。彼女の水玉は模様ではない。それはいたるところに増殖し、南瓜の皮面に貼りつく。南瓜は二次元の紙上から立体へと成長し巨大化する。赤や黄色の水玉の大きな南瓜は出現する。瀬戸内海の直島の砂浜に、渋谷の街中に、京都祇園に、美術館の庭に、設置されたという言い方が間違っているかのように、まさに唐突に出現するのだ。そして、そこにあったかのように同化する。 草間彌生は1929(昭和4)年、長野県松本市の種苗業を営む裕福な家に生まれた。幼少の頃から幻視や幻聴に悩まされ、それから逃れるように絵を描き始めた。それはあたかも、幻視幻聴を描きとめる行為だった。象徴である水玉はこの原初から見られる。水玉=ドットで表面を埋め尽くしていくのは、「耳なし芳一」が幽霊から身を守るために全身に経文を描くことと同じ、強迫から逃れるいわば儀式であるという。 『草間彌生∞INFINITY』は、世界で最も有名な女性アーティストの、幼少期からの知られざる人生を描くドキュメンタリーである。 草間が単身でアメリカに渡るのは1957(昭和32)年で、シアトルを経由し、ニューヨークに移ったのは翌年のことだった。アメリカは自由の国、先進的であるという印象があるが、当時の社会には愕然とした男女差別があった。開かれた世界であるはずの芸術界もまた然り。発表の唯一の手段である個展を開くことさえ、様々な障害が立ちはだかる。女性差別、人種差別、そして芸術家同士の熾烈な争い、裏切りとの遭遇。それでも、草間が頭角を現す苦難との格闘の時代が凄まじい。 60年代のアメリカにあった反社会的なムーブメントに乗る形で草間の表現は注目を集める。不幸だったのは、スキャンダラスな部分だけが切り取られたことだった。掌返しの不遇の時代は容赦なく彼女を閉じ込めることになる。 真っ赤なおかっぱ頭の90歳の芸術家は、真白な紙と対峙する。形は増殖し、色彩が弾ける。草間彌生の生き様がそこに見える。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (8)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年05月01日 / コットンテール 愛妻の遺言をかなえる旅を描いた英日合作 2024年05月01日 / コットンテール 最愛の人の遺言を叶えるための旅の物語 2024年05月01日 / コットンテール 湖水地方の風景が美しい、父と子との再生の映画 more 2022年10月17日 / 港南台シネサロン(神奈川県) 生活の延長線にある居心地の良い街の映画館。 2018年10月24日 / パルシネマしんこうえん(兵庫県) 神戸の下町で、館主こだわりの二本立てに興じる 2019年09月04日 / 洲本オリオン(兵庫県) 瀬戸内海にある島に唯一残る映画館で映画を観る楽しみ more
少女が描いた絵は母に破り捨てられた
草間彌生は「水玉の女王」と呼ばれる。彼女の水玉は模様ではない。それはいたるところに増殖し、南瓜の皮面に貼りつく。南瓜は二次元の紙上から立体へと成長し巨大化する。赤や黄色の水玉の大きな南瓜は出現する。瀬戸内海の直島の砂浜に、渋谷の街中に、京都祇園に、美術館の庭に、設置されたという言い方が間違っているかのように、まさに唐突に出現するのだ。そして、そこにあったかのように同化する。
草間彌生は1929(昭和4)年、長野県松本市の種苗業を営む裕福な家に生まれた。幼少の頃から幻視や幻聴に悩まされ、それから逃れるように絵を描き始めた。それはあたかも、幻視幻聴を描きとめる行為だった。象徴である水玉はこの原初から見られる。水玉=ドットで表面を埋め尽くしていくのは、「耳なし芳一」が幽霊から身を守るために全身に経文を描くことと同じ、強迫から逃れるいわば儀式であるという。
『草間彌生∞INFINITY』は、世界で最も有名な女性アーティストの、幼少期からの知られざる人生を描くドキュメンタリーである。
草間が単身でアメリカに渡るのは1957(昭和32)年で、シアトルを経由し、ニューヨークに移ったのは翌年のことだった。アメリカは自由の国、先進的であるという印象があるが、当時の社会には愕然とした男女差別があった。開かれた世界であるはずの芸術界もまた然り。発表の唯一の手段である個展を開くことさえ、様々な障害が立ちはだかる。女性差別、人種差別、そして芸術家同士の熾烈な争い、裏切りとの遭遇。それでも、草間が頭角を現す苦難との格闘の時代が凄まじい。
60年代のアメリカにあった反社会的なムーブメントに乗る形で草間の表現は注目を集める。不幸だったのは、スキャンダラスな部分だけが切り取られたことだった。掌返しの不遇の時代は容赦なく彼女を閉じ込めることになる。
真っ赤なおかっぱ頭の90歳の芸術家は、真白な紙と対峙する。形は増殖し、色彩が弾ける。草間彌生の生き様がそこに見える。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。