岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品存在のない子供たち B! 「僕を産んだ罪」という大人の責任を問うた告発映画 2019年11月30日 存在のない子供たち ©2018MoozFilms 【出演】ゼイン・アル=ラフィーア、ヨルダノス・シフェラウ、ボルワティフ・トレジャー・バンコレ 【監督・脚本・出演】ナディーン・ラバキー 日本の子どもの貧困率は13.9%、決して他人事ではない。 1989年の国連総会において採択された「子どもの権利条約」では、4つの子どもの権利を守ることを定めている。1:生きる権利(病気などで命を奪われない)、2:育つ権利(教育を受け、遊んだり休んだりできる)、3:守られる権利(虐待や搾取がない)、4:参加する権利(自由に意見を言い、グループをつくる)。 本作は、中東の貧民窟に生まれた推定12歳の少年ゼインが、両親が出生届を出していないために教育も社会的庇護も受けられない中で、過酷な現実を懸命に生き抜き、最後は両親に対して「僕を生んだ罪」という大人の責任を問うた、根源的で深刻な告発映画である。 近頃は「自己責任論」という「貧しいのは本人のせい」という強者の論理がはびこっているが、子どもにその責任論は一切通用しない。子どもは、両親やおかれている環境も自分で選べないからだ。本来、親から無償の愛を与えられるべきゼインは、その親が初潮を迎えた妹を嫁に出すという怒りと絶望から家を飛び出す。 お金も食べ物も無いゼインに対して、見るに見かねて手を差し伸べる不法移民の黒人女性ラヒル。彼女はゼインを家族の一員として迎え入れる。彼が味わう初めての無償の愛だ。 しかし、ラヒルは当局に捕らえられてしまい、12歳のゼインはラヒルのヨチヨチ歩きの息子ヨナスの命を預かる事になってしまう。努力はするものの、どうしていいか分からなくなったゼインは、ヨナスの足を縛って一旦は立ち去ろうとするが、彼にそんな事できるはずがない。戻ってくるゼインの優しさが、胸に沁みる。 妹を妊娠させたうえ、無理な出産で死なせてしまったアサドを刺して少年刑務所に収監されたゼイン。彼は言う、「大人たちに聞いてほしい。世話ができないなら産むな」。子どもの権利を守るのは、まずは親なのだ。 日本の子どもの貧困率は13.9%。決してよその国の悲惨な話として片付けてはいけない。他人事ではないのだ。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 89% 観たい! (8)検討する (1) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年05月01日 / コットンテール 愛妻の遺言をかなえる旅を描いた英日合作 2024年05月01日 / コットンテール 最愛の人の遺言を叶えるための旅の物語 2024年05月01日 / コットンテール 湖水地方の風景が美しい、父と子との再生の映画 more 2019年12月25日 / 佐世保シネマボックス太陽(長崎県) 戦前・戦後と造船の街として栄えた繁華街にともる映画の灯 2019年05月22日 / ガーデンズシネマ(鹿児島県) 映画の後にランチをしながら、おしゃべりを楽しむ 2024年01月10日 / アップリンク吉祥寺(東京都) ファッションビルの地下にあるミニシアターの映画街。 more
日本の子どもの貧困率は13.9%、決して他人事ではない。
1989年の国連総会において採択された「子どもの権利条約」では、4つの子どもの権利を守ることを定めている。1:生きる権利(病気などで命を奪われない)、2:育つ権利(教育を受け、遊んだり休んだりできる)、3:守られる権利(虐待や搾取がない)、4:参加する権利(自由に意見を言い、グループをつくる)。
本作は、中東の貧民窟に生まれた推定12歳の少年ゼインが、両親が出生届を出していないために教育も社会的庇護も受けられない中で、過酷な現実を懸命に生き抜き、最後は両親に対して「僕を生んだ罪」という大人の責任を問うた、根源的で深刻な告発映画である。
近頃は「自己責任論」という「貧しいのは本人のせい」という強者の論理がはびこっているが、子どもにその責任論は一切通用しない。子どもは、両親やおかれている環境も自分で選べないからだ。本来、親から無償の愛を与えられるべきゼインは、その親が初潮を迎えた妹を嫁に出すという怒りと絶望から家を飛び出す。
お金も食べ物も無いゼインに対して、見るに見かねて手を差し伸べる不法移民の黒人女性ラヒル。彼女はゼインを家族の一員として迎え入れる。彼が味わう初めての無償の愛だ。
しかし、ラヒルは当局に捕らえられてしまい、12歳のゼインはラヒルのヨチヨチ歩きの息子ヨナスの命を預かる事になってしまう。努力はするものの、どうしていいか分からなくなったゼインは、ヨナスの足を縛って一旦は立ち去ろうとするが、彼にそんな事できるはずがない。戻ってくるゼインの優しさが、胸に沁みる。
妹を妊娠させたうえ、無理な出産で死なせてしまったアサドを刺して少年刑務所に収監されたゼイン。彼は言う、「大人たちに聞いてほしい。世話ができないなら産むな」。子どもの権利を守るのは、まずは親なのだ。
日本の子どもの貧困率は13.9%。決してよその国の悲惨な話として片付けてはいけない。他人事ではないのだ。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。