岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ここ数作の三谷映画の中では一番満足感が得られた作品

2019年10月26日

記憶にございません!

©2019フジテレビ 東宝

【出演】中井貴一、ディーン・フジオカ、石田ゆり子、草刈正雄、佐藤浩市、小池栄子、斉藤由貴、木村佳乃、吉田羊、山口崇、田中圭、梶原善、寺島進、藤本隆宏、迫田孝也、ROLLY、後藤淳平(ジャルジャル)、宮澤エマ、濱田龍臣、有働由美子
【脚本と監督】三谷幸喜

三谷監督と安倍首相のツーショットは最高のオチ

 三谷幸喜監督は私より3個下の同世代である。「記憶にございません」というフレーズは、1976年のロッキード事件証人喚問の際、小佐野賢治氏が答弁で連発した言葉で、大人への扉を開けつつあった私に強烈な印象を与えた。

 三谷監督も、このインチキ臭いグレーな言い逃れが頭の中にあったのではないか?昨今の政治家や官僚の、同じような答弁で切り抜けようとする姿を見て、その滑稽さを笑い飛ばそうというのが『記憶にございません!』である。

 史上最低の支持率2.3%の黒田首相(中井貴一)は、演説中の投石によって本当の意味での「記憶にございません」という状態になってしまう。普通のオジサンになった黒田が、記憶を無くす前の自分のアメリカべったり、お友だち優遇、消費税を何度も上げる、夫人がペラペラ喋る、第2野党党首との裏工作など国民を舐め切った悪行の数々を目の当たりにし、国民のための方策へと舵を切っていくまでを面白おかしく描いている。

 三谷監督は、こういった内容の映画を安倍首相に真っ先に観てもらい、二人で仲良く写真に納まっている。監督が「政治風刺ではない」と言っているので、政治をネタにした政治コメディとして観てもらったのだと思うが、安倍首相がニコニコしている姿を見ると、オチとしては最高なのだ。私が観て「結構攻めてるじゃん」と思っていても、当の本人は笑ってすまして余裕しゃくしゃく。この不条理さは、映画のラストのさらにその後までを演出したようで、バカにおかしいのだ。

 悪の権化の官房長官(草刈正雄)もいいが、『空母いぶき』ですぐにお腹を下す首相を演じた佐藤浩市が、本作ではゴロツキ記者を演じているのもまたおかしい。

 映画の前半のギャグは、あまりにもベタすぎて笑えない事しばしばであったが、後半になってくるとギャグ慣れしてきて笑えてきた。全体としては、ここ数作の三谷映画の中では一番満足感が得られた作品である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (7)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る