岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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現在の政治への強い危機感が生んだ、世代を跨ぐ稀代の傑作

2019年09月21日

新聞記者

©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

【出演】シム・ウンギョン、松坂桃李、本田翼、岡山天音、郭智博、長田成哉、宮野陽名、高橋努、西田尚美、高橋和也、北村有起哉、田中哲司
【監督】藤井道人

これが真実かどうか、自分の目で見極めろという凄みのある映画

 故大島渚監督は、「政治的な映画は、問題意識のある人に、その通りだと自己認識させるだけでなく、ない人の価値観を揺さぶらなければならない」と言っていたそうだ。

 本作は、忖度や同調圧力が当たり前のようにまかり通る現在の政治状況に対して、強い危機感を抱いた70代“団塊の世代”の河村光庸エグゼクティブプロデューサーが、40代“ポスト団塊ジュニア世代”の新聞記者・望月衣塑子さんの著書を原案に、30代“ミニマムライフ世代”の藤井道人監督に託して描いた、世代を跨ぐ稀代の傑作である。

 最近「あいちトリエンナーレ」を巡り“表現の自由”が問題となったが、私はその事はもちろん、行政やマスコミ、芸術家や表現者などの“自主規制”に対して底知れぬ恐ろしさを感じている。

 この映画は、あらゆる手を使って現政権を守ろうとする内閣情報調査室とそれに同調するマスコミに対して、日韓ハーフの女性記者・吉岡(シム・ウンギョン)が、政策を正面からチェックし、妨害にめげずに追及していくというストーリーだ。話の中心は、ある大学新設計画の裏に潜む闇を暴いていくというフィクションだが、並行して公文書改ざんや官僚の自死、レイプもみ消しなど現在進行形の問題が次々と描かれていく。よくぞここまで攻めたものだと、私は映画館で居住まいを正し、食い入るようにスクリーンを観る。

 一方の主役は内調の役人・杉原(松坂桃李)だ。上司の不道理な指示に従わざるを得ない仕組みと、それに抗い葛藤し苦悩する姿、勇気を振り絞って内部情報の提供者になる行動は、我々に絶望と希望の両方を見せてくれる。この役を引き受けた松坂の勇気を称えると共に、目の前で起こっている事実には戦慄を禁じ得ない。

 藤井監督の冴えわたる演出と、盟友・今村圭佑の寄り添ったり離れたりの自在のカメラは、本作を一級の娯楽作品に仕立て上げた。これが真実かどうか自分の目で見極めろという、凄みのある映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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