岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品ゴールデン・リバー B! 夢に魅了された男たちの友情物語 2019年08月26日 ゴールデン・リバー ©2018 Annapurna Productions, LLC. and Why Not Productions. All Rights Reserved. 【出演】ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、ジェイク・ギレンホール、リズ・アーメッド 【監督】ジャック・オーディアール バイオレンスだけでない詩情豊かな西部劇 時は1851年、ゴールドラッシュに沸くアメリカ西部のオレゴンに最強の殺し屋兄弟“シスターズ・ブラザーズ”がいた。兄のイーライ(ジョン・C・ライリー)はその稼業に嫌気がさしていて、気を許せる弟の前では気の弱い一面を見せる時もあるが、殺しの腕は冷淡で正確。弟のチャーリー(ホアキン・フェニックス)は酒癖が悪く、無鉄砲なヤンチャぶりで兄を悩ませているが、人を殺すことにはためらいがない。 彼らの雇主は地域を牛耳る“提督”で、新たな使命は私物をくすねて逃走した“科学者”(リズ・アーメッド)を捕まえること。行方を追ううち、連絡係として先を行くモリス(ジェイク・ギレンホール)の裏切りを察知する。 西部劇の始まりは1903年の『大列車強盗』(エドウィン・S・ポーター監督)だが、列車を襲った強盗団と自警団の追跡と闘いを描いたもので、ストーリーはいたって単純だが、アクションたっぷりの活劇は観客受けが良かった。西部劇の基本的なかたちはこの作品を踏襲することになる。その黄金期は第二次大戦後から60年代頃で、そこからは大スターが誕生していった。時期を同じくして、“マカロニ・ウェスタン”という西部劇が作られるようになり、本家アメリカの西部劇は衰退した。その影には公民権運動の高まりがあり、人種差別的な内容を含んでいたことが影響を受けたと言われている。 『ゴールデン・リバー』は最近珍しくなった本格派の西部劇だが、インディアンは登場しないし、善悪という単純な構図もない。 シスターズ兄弟は科学者と連絡係に追いつくのだが、ふたりの語る夢に魅了され、黄金の発見に協力する道を選択する。そこには追う者と追われる者の関係を超越した友情が生まれる。 監督はフランス人のジャック・オーディアールで、本格西部劇への強いリスペクトが感じられる。バイオレンスだけではない、美しい絵づくりと詩情性を引き出した演出力は素晴らしい。そして、シスターズ兄弟を演じたふたりの存在感あふれる好演も忘れてはならない。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (8)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年05月01日 / コットンテール 愛妻の遺言をかなえる旅を描いた英日合作 2024年05月01日 / コットンテール 最愛の人の遺言を叶えるための旅の物語 2024年05月01日 / コットンテール 湖水地方の風景が美しい、父と子との再生の映画 more 2022年08月10日 / シネマヴィレッジ8(青森県) リンゴ畑の真ん中にあるシネコンで家族揃って。 2024年01月24日 / 【思い出の映画館】吉祥寺バウスシアター(東京都) 面白い事なら何でもやっちゃうエンタメ三昧の映画館 2023年11月27日 / 鯖江アレックスシネマ(福井県) ものづくりの街にある映画館に溢れる観客の笑顔。 more
バイオレンスだけでない詩情豊かな西部劇
時は1851年、ゴールドラッシュに沸くアメリカ西部のオレゴンに最強の殺し屋兄弟“シスターズ・ブラザーズ”がいた。兄のイーライ(ジョン・C・ライリー)はその稼業に嫌気がさしていて、気を許せる弟の前では気の弱い一面を見せる時もあるが、殺しの腕は冷淡で正確。弟のチャーリー(ホアキン・フェニックス)は酒癖が悪く、無鉄砲なヤンチャぶりで兄を悩ませているが、人を殺すことにはためらいがない。
彼らの雇主は地域を牛耳る“提督”で、新たな使命は私物をくすねて逃走した“科学者”(リズ・アーメッド)を捕まえること。行方を追ううち、連絡係として先を行くモリス(ジェイク・ギレンホール)の裏切りを察知する。
西部劇の始まりは1903年の『大列車強盗』(エドウィン・S・ポーター監督)だが、列車を襲った強盗団と自警団の追跡と闘いを描いたもので、ストーリーはいたって単純だが、アクションたっぷりの活劇は観客受けが良かった。西部劇の基本的なかたちはこの作品を踏襲することになる。その黄金期は第二次大戦後から60年代頃で、そこからは大スターが誕生していった。時期を同じくして、“マカロニ・ウェスタン”という西部劇が作られるようになり、本家アメリカの西部劇は衰退した。その影には公民権運動の高まりがあり、人種差別的な内容を含んでいたことが影響を受けたと言われている。
『ゴールデン・リバー』は最近珍しくなった本格派の西部劇だが、インディアンは登場しないし、善悪という単純な構図もない。
シスターズ兄弟は科学者と連絡係に追いつくのだが、ふたりの語る夢に魅了され、黄金の発見に協力する道を選択する。そこには追う者と追われる者の関係を超越した友情が生まれる。
監督はフランス人のジャック・オーディアールで、本格西部劇への強いリスペクトが感じられる。バイオレンスだけではない、美しい絵づくりと詩情性を引き出した演出力は素晴らしい。そして、シスターズ兄弟を演じたふたりの存在感あふれる好演も忘れてはならない。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。