岐阜新聞 映画部

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韓国現代史の汚点を描いた感動作

2018年07月22日

タクシー運転手 約束は海を越えて

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【出演】ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン、ユ・ヘジン、リュ・ジュンヨル
【監督】チャン・フン

この映画が成功した2つの要因とは

 1980年5月、民主化ムードが漂っていた韓国・光州市で起こった軍部による学生・市民への大虐殺、いわゆる「光州事件」の悲惨な状況を世界へ発信したドイツ人記者と、タクシー運転手の勇気ある行動を描いた社会派映画である。

 この映画の成功の要因は、ソウルのタクシー運転手マンソプ(ソン・ガンホ)が、韓国の一市民として歴史的大事件を目撃したという視点で描かれていることである。人が好く人間くさいダメダメ父さんを軽妙に演じたソン・ガンホが、タクシーを運転して日常の世界から異常な世界へとピーター(トーマス・クレッチマン)と観客を案内してくれる。起きている出来事を客観的な視点で見られる仕掛けは、この悲惨な事件を追体験しているような感覚になる。

 物語は、タクシーの売上激減のマンソプが、ソウルで反体制デモをしている学生に対し「親の金で学校に行かせてもらっているボンボンは国民の敵だ」と政府の一方的な主張を感覚的に信じている話からスタートし、ピーターとのユーモアを交えたやりとりが楽しいロードムービー的シーンをはさみ、光州に入ってからは次第にことの重大さに気が付くという展開で、平凡な市民が事件に巻き込まれ、真相を知っていく過程を見事に描いている。

 最近の韓国映画に多い、ダメな父親が可愛い娘のために強力な敵と戦うという骨子が、話への入り込みやすさに繋がっており、これも成功の要因であろう。また、マンソプは光州市民と一緒に戦ったわけでなく、「お客さんをソウルへ連れて帰る」という責任感や人としての道理で動いており、誠実さこそが人間の価値であると示してくれる。

 結果として、光州での出来事を世界に知らせるための手助けをしたにも関わらず、凄い事をやったという感覚が本人にはおそらくなかったのだろうと推察されることが、多くの人に共感を呼んだのだと思う。韓国の現代史の汚点を描いた感動作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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