岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

あなたはどこまで無関心でいられるか?

2018年06月23日

ハッピーエンド

©2017 LES FILMS DU LOSANGE - X FILME CREATIVE POOL Entertainment GmbH – WEGA FILM – ARTE FRANCE CINEMA - FRANCE 3 CINEMA - WESTDEUTSCHER RUNDFUNK - BAYERISCHER RUNDFUNK – ARTE - ORF Tous droits réservés

【出演】イザベル・ユペール、ジャン=ルイ・トランティニャン、マチュー・カソヴィッツ、ドビー・ジョーンズ、ファンティーヌ・アルドゥアン
【脚本・監督】ミヒャエル・ハネケ

SNSに依存する闇という病

 横長のスクリーンの中央に、スマートフォンの液晶画面が石柱のように立ちはだかる。映し出された動画は、洗面台に向かった女性の後ろ姿。うがい、オシッコ…行動観察のような説明字幕が流れる。次もスマートフォンの画像…ケージの中のハムスター。餌に混ぜられた精神安定剤を食べ、グッタリとする。リビングルームのソファーで横たわる女性…動かない。キレる母親。薬を飲ませた?救急車を呼ぶ…少女の声が、ナレーションのようにかぶさる。

 ミヒャエル・ハネケ監督は前作『愛、アムール』で音楽家の夫婦の老老介護を描いた。妻を介護する夫がジョルジュで、本作でも同じ役名をジャン=ルイ・トランティニャンが演じている。娘役のイザベル・ユペールも同様の役柄だが、名前はエヴァからアンヌに変わっている。ジョルジュの告白から前作との繋がりを感じさせはするが、これは続編ではない。エヴァとよく似た発音のエヴが冒頭のSNSの画像の発信者。物語はエヴが母親の入院を機に、離婚で別れた実父であるジョルジュの長男トマ(マチュー・カソヴィッツ)に引き取られ、建築会社を経営する裕福な大家族ロラン家に身を寄せるところからはじまる。

 映画の語り口は普通ではない。エピソードは唐突に提示されるが、意味不明な不安定な部分が多く、何が真実なのか? 繋がりすらもよく分からない。工事現場の土砂崩れ。卑猥な表現が連なるチャット。夜中の徘徊ドライブ。吠え続ける番犬。暴力。狂気の乱舞。自殺未遂。かみ合わない会話…。引きの長回しの映像は凡長で退屈であったりするのに、奇妙な緊張感に転じたりする。そして、ある瞬間に、前後はジグソーパズルのように結びつくのだが、パズルは完璧にはまり込むわけではない。繋ぎ目に生じた隙間は、不愉快で居心地が悪い。

 そこでスマホを覗き込んでいるあなた…親子、夫婦、難民…目を背けるのは簡単だけれど、無関心でいられるか!?「ハッピーエンド」という皮肉な題名に込められたメッセージは痛烈!


『ハッピーエンド』は岐阜CINEXほか、全国で公開中。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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