岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

男社会のインドで輝いた娘たちとその父親

2018年06月17日

ダンガル きっと、つよくなる

©Aamir Khan Productions Private Limited and UTV Software Communications Limited 2016

【出演】アミール・カーン、ファーティマー・サナー・シャイク、サニャー・マルホートラ、サークシー・タンワル、アパルシャクティ・クラーナー
【監督・脚本】ニテーシュ・ティワーリー

ユーモアとセンチメンタリズムの匙加減も絶妙

 スポーツと映画は相性が良く、『ロッキー』や『レイジング・ブル』、そして昨年公開の日本映画『あゝ、荒野』など、傑作の多いボクシング映画を筆頭にさまざまな競技を描いた傑作・秀作が存在する。しかし、アマチュア・レスリングを描いた映画は『ビジョン・クエスト 青春の賭け』ぐらいしか思い浮かばない。

 インド映画『ダンガル きっと、つよくなる』は、女子のアマチュア・レスリングを描いたスポ根映画の快作である。父親が自分の果たせなかった夢を子に託し、スパルタ教育で鍛え上げると言えば「巨人の星」のようだが、そこにインドの男尊女卑的な社会がストーリーに大きく絡んでくる。この社会性が、単なるスポ根映画に終わらせていない良さである。

 女の子は14歳になったら顔も知らない男と結婚させられ、家庭に縛られるのが常であったインドの片田舎の農村が舞台である。レスリングの国内チャンピオンになりながらも、生活のため引退せざるを得なかった主人公マハヴィルが、自分の息子に国際大会での金メダルの夢を託そうとするが、生まれてくるのは女の子ばかり。そこで、娘ふたりを鍛え上げ親子で金メダルを目指す。

 インド映画ではあるが、音楽はトレーニングシーンに効果的に使われる程度で、ミュージカル映画のような歌や踊りの場面はない。実話を基にした本格スポーツ映画で、競技場面はアメリカのスポーツ映画顔負けのリアルさ。ユーモアとセンチメンタリズムの匙加減も絶妙。

 マハヴィルを演じたアーミル・カーン(傑作『きっと、うまくいく』など)は、インドの国民的大スター。この作品ではレスリング選手だった若き日から50代になり太った姿まで、肉体改造をして27キロの体重の増減で演じ切ったとのこと。ふたりの娘の子供時代と成長してからを演じた4人もレスリング経験がなく、6か月のトレーニングで鍛え上げたらしい。

 クライマックスのレスリング場面は、フラッシュバック(頭をよぎる父親の教え)が効果的に使われ、最高にエキサイティングなシーンとなり、素敵なラストシーンを迎える。


『ダンガル きっと、つよくなる』は岐阜CINEXほか、全国で公開中。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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