岐阜新聞 映画部

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傑作じゃけぇ、何度観てもええんじゃ

2018年06月03日

孤狼の血

©2018「孤狼の血」製作委員会

【出演】役所広司、松坂桃李、真木よう子、中村獅童、竹野内豊、ピエール瀧、石橋蓮司、江口洋介
【監督】白石和彌

巧みに情を描く白石和彌監督の力量が遺憾なく発揮されている

 『孤狼の血』はキレもコクもある傑作だ。北野武監督の「アウトレイジ」シリーズはキレはあるがコクが足りなかった。同じ群像やくざ映画でも、そこが「仁義なき戦い」シリーズに及ばないところであった。『孤狼の血』は、やくざの抗争を描いているが、マル暴の刑事を主役とする刑事物である。しかし、原作者の柚木裕子はこの小説を「仁義なき戦い」に影響されて書いたらしい。そして、白石和彌監督が「仁義なき戦い」に迫る、何度も観たくなるような、キレもコクもある傑作に仕上げた。

 快進撃の続く白石監督の作品を初めて観たのは『凶悪』であった。その印象はとてもドライなタッチの犯罪映画で、インパクトある傑作ではあったが好きとは言えなかった。続く『日本で一番悪い奴ら』はハイテンションの実録映画で、ユーモアがある分前作より好きだったが、この作品もドライな作風は一貫していた。ところが、その後の『牝猫たち』、『彼女がその名を知らない鳥たち』では、ドライ一辺倒ではなく情を描くのにも長けた監督であることを鮮やかに証明してみせる。『孤狼の血』の後半では、ウエットになることなく、巧みに情を描ける監督の力量が遺憾なく発揮されている。

 そして、役者の潜在能力を引き出せる白石監督の才能にも毎回感心させられる。今回、主役の型破りなベテラン刑事・大上に、日本を代表する名優である役所広司を起用。その圧倒的な存在感は、作品の質をワンランク上げるほどの成果をもたらしている。彼とコンビを組む若手エリート刑事役には、『彼女がその名を知らない鳥たち』、『娼年』で進境著しい松坂桃李。大上のやり方を否定しながらも彼に惹かれていく内的葛藤を見事に演じている。そして、脇の俳優陣も熱い演技で火花を散らし、作品に厚みを与えている。

 『彼女がその名を知らない鳥たち』の終盤で明かされる真実と同じく、『孤狼の血』の終盤で明らかになる大上の人物像は、情を見事に浮かび上がらせる監督の手腕が冴えわたり、映画に忘れがたいロマンを刻印している。


『孤狼の血』は岐阜CINEXほか、全国で公開中。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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