岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

いまを生きる女子高生と、死にゆく特攻隊員のラブストーリー

2024年05月10日

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。

©2023「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会

【出演】伊藤健太郎、嶋崎斗亜、上川周作、小野塚勇人、出口夏希、坪倉由幸、津田寛治、天寿光希、中嶋朋子/松坂慶子
【監督】成田洋一

戦争がダメなのは間違いない

本作は昨年の12月8日に封切られ、現在までに興行収入約45億円を超える大ヒットとなっている。配給の松竹によれば、「原作の読者層でもある女子中高生を中心に、10代20代の方々に多くご来場いただいています。」とのこと。SNS上では「泣けた」という感想に溢れ、百合と彰の想いに共感し当たり前の日常に感謝する声が多くなっている。

特攻隊を描いた映画は、①特攻作戦がいかに愚策だったかを強調し、作戦を命じた上層部を批判的に描いた映画、②特攻隊員の自己犠牲的精神を褒めたたえ、軍神として美化した映画、③特攻隊員の母や恋人、周辺の市井の人々などの視点から情感に訴えた映画、などに分かれるが、どんな描き方をしても賛否がわかれるのは仕方のない題材である。

本作は、いまを生きる女子高生・百合(福原遥)が1945年6月にタイムスリップして、特攻隊員の彰(水上恒司)と恋をするというラブストーリーだ。

戦争がどうなったかを知っている百合は彰に、「特攻なんて、ただの無駄死にだよ。みんなが命を捨てて敵艦に突撃しても、結局敗けるんだよ」と言う。

だがいくら情感に訴えたところで、強固な特攻のメカニズムにはなすすべもない。都市部は空襲で焼け野原となり、本土決戦間近という劣勢の中では「捨て身の覚悟」以外に挽回する方法はない。としか当時の状況では考えられないであろう。

彼らに、現代の観点で「無駄死に」だと言って共感を得たり泣かせたりするのは高みの見物に過ぎない。勝てば無駄死にではなくなるのか?という疑問もわく。

特攻隊員たちが陽気で冗談を言い合う仲なのはいい。俳優たちはみんな好演している。

しかし何か引っかかるのは、「昔のこと」「可哀そうな人」としか見えないのではないかという懸念だ。選択肢が無くなってから上から目線で言うのは私は好きではない。

でも「戦争はだめだ」ということが伝わってくるのは間違いない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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