岐阜新聞 映画部

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未解決事件を扱った、見応え充分のセザール賞受賞作

2024年05月01日

12日の殺人

© 2022 - Haut et Court - Versus Production - Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma

【出演】バスティアン・ブイヨン、ブーリ・ランネール、テオ・チョルビ、ヨハン・ディオネ、ティヴー・エヴェラー、ポーリーヌ・セリエ、ルーラ・コットン・フラピエ
【監督】ドミニク・モル

各捜査員たちの抱える悩みも浮き彫りとなってくる

未解決事件を扱った映画としては、本作の監督ドミニク・モルも好きだと公言しているデヴィッド・フィンチャー監督の『ゾディアック』(2007/キネ旬9位)のインパクトが強いが、日本でも下山事件の真相を追及した『日本の熱い日々 謀殺・下山事件』(1981/熊井啓監督/キネ旬12位)や、グリコ・森永事件をモチーフとした『レディ・ジョーカー』(2004/平山秀幸監督/キネ旬49位)、『罪の声』(2020/土井裕泰監督/キネ旬7位)など傑作・秀作も多い。

私は『12日の殺人』の元になった実際の殺人事件「モード・マレシャル殺人事件」(2013年5月発生)のことは知らなかったが、本作は殺人事件の真相や真犯人を暴くことに重点はおかれておらず、この事件に関わる捜査機関の者たちに焦点があてられている映画なので、本物の事件は知らなくても全く差し支えない。

映画は、パーティから帰宅途中の女子大生クララが何者かに火を付けられ生きたまま殺されるというショッキングなシーンから始まる。次から次へと容疑者は浮かんでくるが、みんな怪しいだけであり真犯人であるとの決め手には欠けている。わかってきたのは被害者は全員と"関係"を結んでいたということだ。

クララは理不尽に殺された上、性遍歴まで暴露されて「性に奔放な女性」とのレッテルを貼られてしまう。マスコミや一部の大衆は、それを面白がるかもしれない。でも普段の彼女は、親友が捜査関係者に「男関係のことばかり聞いてくるけど、優しい子だったし、私の親友よ。」と言うようにごく普通の女子大生なのだ。

事件の捜査が進むにしたがって、各捜査員たちの抱える悩みや現実も浮き彫りとなってくる。もちろん犯人にいきつかない焦りもあるが、妻から離婚を突きつけられている刑事や、公道へ出るでもなくひたすらトラックで自転車をこぎ続ける刑事もいる。

見応え充分のセザール賞受賞作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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