岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品弟は僕のヒーロ― B! 大らかな両親の下で育つ子どもたち、笑みをもらえるホームドラマ 2024年02月13日 弟は僕のヒーロ― @COPYRIGHT 2019 PACO CINEMATOGRAFICA S.R.L. NEO ART PRODUCCIONES S.L. 【出演】アレッサンドロ・ガスマン、イザベラ・ラゴネーゼ、ロッシ・デ・パルマ、フランチェスコ・ゲギ、ロレンツォ・シスト、ロベルト・ノッキ、アリアンナ・ベケローニ 【監督】ステファノ・チパーニ 天真爛漫なスーパーヒーローのジョー君 2023年のキネ旬ベストテン2位で、アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた『PERFECT DAYS』の中に、「木漏れ日」を感じられるトイレで、たかし(柄本時生)が幼なじみのでらちゃんに耳を引っ張られる印象的なシーンがある。そのでらちゃんを演じたのが、ダウン症の俳優・吉田葵君(17)である。 「障害のある役はその当事者が演じる」が最近の映画のトレンドであるが、日本でも「ダウン症の俳優」が出てきたのは感慨深い。 イタリアの実話の映画化『弟は僕のヒーロー』で、主役のジャック(フランチェスコ・ゲギ)の弟・ジョー役を演じるのは、実際にダウン症のあるロレンツォ・シスト君である。天真爛漫で人懐っこい役柄はおそらくロレンツォ君そのものであり、映画が明るいホームドラマになっているのも、彼の功績大である。 とにかくジャックとジョーの両親がいい。2人の姉妹も含めた6人の家族が何の違和感もなく、ジョーを特別扱いもせず明るく楽しく過ごせているのも、大らかな両親のおかげである。ジョーがダウン症なのは事実なので、他の兄弟と違う「特別な子」だと説明するのだが、子どもにとっては何の偏見もない普通の世界なのだ。 それが思春期を迎える頃になると、ダウン症の弟のことを隠したくなる気持ちも分らぬでもない。恥ずかしくはないが、説明するのが面倒くさくなってしまう。 でもそんなのは人生の中では一瞬だ。元々弟とは仲良しなので、むしろ誇らしく思えるようになる。ステファノ・チパーニ監督は、そんなことを含め全てを暖かく見つめて描いている。 この映画を観ていると、日本の有名バイオリニストとダウン症のお姉さんを含む一家のテレビドキュメンタリーを思い出す。当たり前のようにあっけらかんと過ごしつつ、彼女が一人になったときの心配も包み隠さず映し出す。 日本でもイタリアでも家族の形に違いはない。笑みをもらえる映画だ。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (7)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年05月01日 / コットンテール 愛妻の遺言をかなえる旅を描いた英日合作 2024年05月01日 / コットンテール 最愛の人の遺言を叶えるための旅の物語 2024年05月01日 / コットンテール 湖水地方の風景が美しい、父と子との再生の映画 more 2019年01月30日 / 御成座(秋田県) 街の人たちの勘違いから復活した秋田の映画館 2021年08月11日 / 【思い出の映画館】上野セントラル(東京都) 下町のターミナル駅にあった人情味溢れる松竹封切館 2022年08月24日 / 元町映画館(兵庫県) 淀川長治が育った映画の街に再び映画の灯が甦った。 more
天真爛漫なスーパーヒーローのジョー君
2023年のキネ旬ベストテン2位で、アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた『PERFECT DAYS』の中に、「木漏れ日」を感じられるトイレで、たかし(柄本時生)が幼なじみのでらちゃんに耳を引っ張られる印象的なシーンがある。そのでらちゃんを演じたのが、ダウン症の俳優・吉田葵君(17)である。
「障害のある役はその当事者が演じる」が最近の映画のトレンドであるが、日本でも「ダウン症の俳優」が出てきたのは感慨深い。
イタリアの実話の映画化『弟は僕のヒーロー』で、主役のジャック(フランチェスコ・ゲギ)の弟・ジョー役を演じるのは、実際にダウン症のあるロレンツォ・シスト君である。天真爛漫で人懐っこい役柄はおそらくロレンツォ君そのものであり、映画が明るいホームドラマになっているのも、彼の功績大である。
とにかくジャックとジョーの両親がいい。2人の姉妹も含めた6人の家族が何の違和感もなく、ジョーを特別扱いもせず明るく楽しく過ごせているのも、大らかな両親のおかげである。ジョーがダウン症なのは事実なので、他の兄弟と違う「特別な子」だと説明するのだが、子どもにとっては何の偏見もない普通の世界なのだ。
それが思春期を迎える頃になると、ダウン症の弟のことを隠したくなる気持ちも分らぬでもない。恥ずかしくはないが、説明するのが面倒くさくなってしまう。
でもそんなのは人生の中では一瞬だ。元々弟とは仲良しなので、むしろ誇らしく思えるようになる。ステファノ・チパーニ監督は、そんなことを含め全てを暖かく見つめて描いている。
この映画を観ていると、日本の有名バイオリニストとダウン症のお姉さんを含む一家のテレビドキュメンタリーを思い出す。当たり前のようにあっけらかんと過ごしつつ、彼女が一人になったときの心配も包み隠さず映し出す。
日本でもイタリアでも家族の形に違いはない。笑みをもらえる映画だ。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。