岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

"老い" と "死" を正面から描く奇才の野心作

2024年02月07日

VORTEX ヴォルテックス

© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – LES CINEMAS DE LA ZONE - KNM – ARTEMIS PRODUCTIONS – SRAB FILMS – LES FILMS VELVET – KALLOUCHE CINEMA

【出演】ダリオ・アルジェント、フランソワーズ・ルブラン、アレックス・ルッツ
【監督・脚本】ギャスパー・ノエ

夫を演じるのはイタリアの鬼才ダリオ・アルジェント監督 衝撃の俳優デビュー

監督、脚本のギャスパー・ノエは、1963年、アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれた。

父親のルイス・フェリペ・ノエは高名な画家で、子ども時代はニューヨークで過ごした。1976年にフランスに移住し、パリの "エコール・ルイ・リュミエール" で映画を学び、1985年頃から短編を撮り始めた。

ギャスパー・ノエの名前が世界的に知られるようになったのは、95年にカンヌ映画祭で批評家週間賞を受賞した中編映画『カルネ』で、その続編にあたる『カノン』で、98年に長編デビューを果たしている。

2002年、カンヌ映画祭で正式上映された長編第2作『アレックス』は、ノエの名前をさらに世界的に知らしめた作品として記憶される。

長く連れ添う老いた夫婦は、穏やかな日常を過ごしていた…これからも続くはずだった。

映画評論家の夫は、心臓に病を抱え、迫り来る死を予感せずにはいられない。加えて、もうひとつの心労の種は、妻の認知症の進行だった。精神科医としてのキャリアを積み上げていた妻の精神は、無惨にも崩壊への道を辿っている。

離れて暮らす息子は、そんな両親のことを心配している。とは言え、現状を変えて、身近に寄り添うことも叶わず、金銭面で援助をすることが精一杯なのだが…実家を訪れ、目の当たりにしたのは、些細な日常生活にも支障を来す両親の姿だった。

『アレックス』には9分間に及ぶレイプシーンがある。執拗極まりない暴力で、途中で気分が悪くなる。観る側も拷問に近い状況下に置かれるわけで、これは映画鑑賞という領域からは逸脱する。現に、カンヌ映画祭の上映時には退席退場者が続出した。以来、ギャスパー・ノエは鬼才と呼ばれるようになった。

本作では "老いと死" という、現実的なテーマを扱っている意外性と、夫婦の生活を同時に2分割映像で観せる技巧を同居させ、変わらぬ鬼才ぶりを発揮しているが、これはミスマッチでは? と指摘したくなる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (9)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る