岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

失踪した市子の何故を解き明かすドラマ

2024年02月02日

市子

©2023 映画「市子」製作委員会

【出演】杉咲花、若葉竜也、森永悠希、倉悠貴、中田青渚、石川瑠華、大浦千佳、渡辺大知、宇野祥平、中村ゆり
【監督】戸田彬弘

記述することでしかない名前と生きていくための名前

失踪とは?

当事者から言えば、行方をくらますこと。その他の人にとっては、行方が知れなくなること。

同じような言葉に、失跡、蒸発、家出、行方不明、または、神隠しなどがある。

小説や映画でも、よく使われる題材で、最近では『ある男』(石川慶・監督/平野啓一郎・原作/2022年)が記憶に新しい。

とある町。多分、関西方面。川辺市子(杉咲花)と長谷川義則(若葉竜也)は、3年間、一緒に暮らし、幸せな日々をともに過ごしてきた。そんな時、市子は長谷川からプロポーズされる。

涙いっぱいに眼を潤ませながら、喜びをあふれさせるその表情が、強烈に記憶に刻印される。

しかし、翌日、市子は忽然と姿を消す。

理由も何もわからないまま、ただ途方に暮れる長谷川のもとに、市子を探しているという刑事の後藤(宇野祥平)が現れる。

後藤が語りだす市子の肖像は、長谷川が接して目に焼きついている彼女の姿から遠ざかっていく。そして、後藤が1枚の写真を差し出して「この女性は "誰" なのでしょうか?」という自問のような問い掛けが、市子を完全に幻に変えてしまう。

原作は監督の戸田彬弘が主宰を務める "劇団チーズtheater" の旗上げ公演「川辺市子のために」で、2015年に初演された戯曲である。

長谷川は市子の行方を追い、自分の知らなかった彼女に近づこうとする。

市子の過去にさかのぼり、幼なじみ、高校時代の同級生、接点のあった人に会い、証言を得る中、かつて彼女が市子ではない名前を名乗っていたことを知る。

映画は、時間を交錯させながら、市子の不明を徐々にはがし、真実に辿り着こうとする映像ならではの複雑な構成で進行する。

舞台版の演出が、最小限のシンプルな装置で空間をつくる方法がとられたのとは対照的に。

点が次第に線として結ばれる中、些か複雑に絡みすぎた糸が過剰過ぎるのが惜しまれる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (8)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る