岐阜新聞 映画部

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パリ同時多発テロ被害者家族の実話

2024年01月19日

ぼくは君たちを憎まないことにした

©2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion

【出演】ピエール・ドゥラドンチャンプ、カメリア・ジョルダナ、アン・アゾレイ
【監督・脚本】キリアン・リートホーフ

見えない憎しみの根源よりも 理想を幻想に終わらせないための祈り

少し話はズレていますが…「卵が先か鶏が先か」の議論を憎しみの連鎖に置き換えてみる。

朝、慌ただしい日常の風景。ジャーナリストのアントワーヌは、仕事に急ぐ妻のエレーヌのことを、息子のメルヴィルとともに見送る。

その日は2015年11月13日、場所はパリ。

夜、テレビで映し出されるのは、パリの中心部で発生した同時多発テロを告げるニュース。

この悲惨な事件に最愛のエレーヌが巻き込まれたことをアントワーヌは知る。

ロシアはウクライナに侵攻を開始した時、ジェノサイドを阻止するためと理由づけた。

ハマスによるイスラエルへの攻撃は、長年にわたるイスラエルのパレスチナ人への弾圧に対する反抗だと言う。

ウクライナもイスラエルもそれを否定するし、その報復を開始して闘いとなる。戦争は今も続いている。悪いのはどっちだと言う議論は、外野の異論を巻き込んで混迷する。

"眼には眼を" は、人が誰かを傷つけた場合、その同程度の罰を受けるべき、という "同害復讐法" の考えを表すものだか、もとはイスラム教の法典にある言葉らしい。

パリの同時多発テロは、はじめ、サン=ドニのサッカースタジアムの近隣で発生し、その後、市街地10、11区の料理店、バーなどへの無差別発砲に広がり、バタクラン劇場への立てこもりに進展し、翌日の未明のフランス国家警察の特殊部隊の突入によって終結する。死者は130人(少なくとも)、負傷者は352人に及んだ。

実行犯はイスラム国ないしISの戦闘員の複数グループだという。

妻を失ったアントワーヌは、その悲しみ、子育てへの漠然とした不安から、焦燥し混乱する。

しかし、アントワーヌはどん底から、テロリストたちに向け、SNSにメッセージを書き込む。

ぼくは、君たちに "憎しみを贈らない" ーこの宣言は悲しみに沈むパリを世界を変えていく。

卵と鶏の話は生命の起源に関わる。憎しみの連鎖も命に関わる、と強引に結びつけてみる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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