岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品ぼくは君たちを憎まないことにした B! 憎しみの連鎖を断ち切る勇気を描いた映画 2024年01月19日 ぼくは君たちを憎まないことにした ©2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion 【出演】ピエール・ドゥラドンチャンプ、カメリア・ジョルダナ、アン・アゾレイ 【監督・脚本】キリアン・リートホーフ 「憎しみを贈らない」ことがテロに屈しないこと 「パリ同時多発テロ事件」は、2015年11月13日にパリとその郊外でイスラム過激派が起こした事件で、死者130名、負傷者300名以上を生んだ悲劇だ。その中で、ロックバンド「イーグルス・オブ・デス・メタル」のライブが行われていた「バタクラン」では、銃の乱射によって89名が殺害された。 本作の主役であるアントワーヌ・レリス(ピエール・ドゥラドンシャン)は、この事件で最愛の妻エリーナ(カメリア・ジョルダナ)を失う。何の罪もない人間がテロに巻き込まれて死んでしまった時、憎しみに満ちた世界とどう向き合うかを描いた映画が『ぼくは君たちを憎まないことにした』である。 突然、生後17ヵ月の息子と2人だけになってしまったアントワーヌの悲しみは計り知れない。映画の中でも過酷な現実を前にして、犯人に対する憎しみと自己の喪失感で心の中がグラグラする。 ママがいなくなったことを知る由もない息子は、お腹もすくしパパに絵本も読んでもらいたい。絶望的になってもおかしくない状況だ。 そんな中でアントワーヌはフェイスブック上にテロリストに宛てた手紙を公開する。 「金曜の夜、君たちはぼくにとってかけがえのない人の命を奪った。…だが、ぼくは君たちを憎まないことにした。…決して君たちに憎しみという“贈り物”をあげることはない。君たちの望み通りに怒りで応じることは、君たちと同じ無知に屈することになる。…だが君たちの負けだ。ぼくは変わらない。…ぼくと息子は2人になったが、世界中の軍隊よりも強い。そしてこれ以上、君たちのために割く時間はない。…」 アントワーヌは決意したのだ。怒りと恐怖に支配され、それを憎しみで返すことこそテロに屈することだと。 映画はこのアントワーヌの強い決意を力強く後押ししている。憎しみの連鎖を断ち切るには勇気がいるが、「憎しみを贈らない」ことがテロに立ち向かう唯一の方法なのだと。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (10)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年05月01日 / コットンテール 愛妻の遺言をかなえる旅を描いた英日合作 2024年05月01日 / コットンテール 最愛の人の遺言を叶えるための旅の物語 2024年05月01日 / コットンテール 湖水地方の風景が美しい、父と子との再生の映画 more 2024年02月28日 / jig theater(鳥取県) 池を見下ろす高台に建つ閉校した小学校にあるミニシアター。 2019年02月27日 / 延岡シネマ(宮崎県) 夏休み…映画館で買ってもらったお菓子の味を思い出す。 2020年08月05日 / 大津アレックスシネマ(滋賀県) 琵琶湖畔にある絶景をロビーから満喫できる映画館 more
「憎しみを贈らない」ことがテロに屈しないこと
「パリ同時多発テロ事件」は、2015年11月13日にパリとその郊外でイスラム過激派が起こした事件で、死者130名、負傷者300名以上を生んだ悲劇だ。その中で、ロックバンド「イーグルス・オブ・デス・メタル」のライブが行われていた「バタクラン」では、銃の乱射によって89名が殺害された。
本作の主役であるアントワーヌ・レリス(ピエール・ドゥラドンシャン)は、この事件で最愛の妻エリーナ(カメリア・ジョルダナ)を失う。何の罪もない人間がテロに巻き込まれて死んでしまった時、憎しみに満ちた世界とどう向き合うかを描いた映画が『ぼくは君たちを憎まないことにした』である。
突然、生後17ヵ月の息子と2人だけになってしまったアントワーヌの悲しみは計り知れない。映画の中でも過酷な現実を前にして、犯人に対する憎しみと自己の喪失感で心の中がグラグラする。
ママがいなくなったことを知る由もない息子は、お腹もすくしパパに絵本も読んでもらいたい。絶望的になってもおかしくない状況だ。
そんな中でアントワーヌはフェイスブック上にテロリストに宛てた手紙を公開する。
「金曜の夜、君たちはぼくにとってかけがえのない人の命を奪った。…だが、ぼくは君たちを憎まないことにした。…決して君たちに憎しみという“贈り物”をあげることはない。君たちの望み通りに怒りで応じることは、君たちと同じ無知に屈することになる。…だが君たちの負けだ。ぼくは変わらない。…ぼくと息子は2人になったが、世界中の軍隊よりも強い。そしてこれ以上、君たちのために割く時間はない。…」
アントワーヌは決意したのだ。怒りと恐怖に支配され、それを憎しみで返すことこそテロに屈することだと。
映画はこのアントワーヌの強い決意を力強く後押ししている。憎しみの連鎖を断ち切るには勇気がいるが、「憎しみを贈らない」ことがテロに立ち向かう唯一の方法なのだと。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。