初恋相手を見つけに、韓国南部の旅へ

余命宣告をされた主人公が人生最後の願いをかなえるため行動をおこす。さて何をするか？『生きる』（1952）の渡邊勘治（志村喬）は公園を造り、『最高の人生の見つけ方』（2019）の幸枝（吉永小百合）はももクロのライブを見に行く。

そして韓国映画『人生は、美しい』のセヨン（ヨム・ジョンア）は、夫（リュ・スンリョン）と一緒に彼女の初恋相手ジョンウ（オン・ソンウ）に会いに行くのだ。別に不倫相手ではないので全く問題ない。

余命2カ月という極端な設定でも、美人はちっともやつれないというのは日韓共通のお約束事なので、こんなところで引っかかっていてはいけない。

2人は自家用車に乗って韓国南部へ旅に出かける。手掛かりはセヨンと同じ高校だったという点だけで、まずは夫妻はソウルから木浦（モッポ）へ向かう。朝鮮半島南西部の港町で、気象通報マニアには「モッポでは風力3、晴れ・・・」でお馴染みの町、耳馴染みのある地名だ。セヨンとジョンウが通っていたモッポ高校へ行ってみるが、すぐにわかるはずもない。

続いて釜山（プサン）。高層ビルが立ち並ぶ韓国第2の都市で、映画マニア的には釜山国際映画祭の町である。飛行機嫌いにとっては、下関と福岡と大阪から船で行けるのが嬉しい外国だ。

そして内陸部へ戻って清州（チョンジュ）、さらに南部海岸部にある甫吉島（ポギルド）へ。

セヨンの病状は一向に悪くならないので、見ている私は彼女の病気のことはすっかり忘れ、一度行ってみたかった韓国旅行への誘いが急激に増してきた。できれば慶州と済州島へも行って欲しかったなあ。

初恋の相手を探す旅の結末は映画を観てのお楽しみだが、ロードムービーの合間に高校時代の思い出が現代と交互に映し出され、その部分はキラキラ映画である。

決してお涙頂戴でなく、過去を懐かしめば『人生は、美しい』と思えるのだ。気楽に楽しめて素直に泣ける映画である。