岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

妊娠期間が楽になる?近未来を描くファンタジー映画

2024年01月11日

ポッド・ジェネレーション

© 2023 YZE – SCOPE PICTURES – POD GENERATION

【出演】エミリア・クラーク、キウェテル・イジョフォー、ロザリー・クレイグ、ヴィネット・ロビンソン、ジャン=マルク・バール
【監督・脚本】ソフィー・バーセス

《ポッド》で胎児を育てるのか、自然妊娠か

日本の女性の合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に産む子どもの人数)は、2022年は1.26人であった。1947年には4.54人だった出生率が1952年には2.98人へ。1961年に1.96人を記録した翌年からは2人台が続き、1975年再び1.91人になってからはずっと1人台が続いている。

男女の性差で決定的に違うのは、子どもを妊娠できるのは女性のみであること。少なくとも280日の妊娠期間は、男性は(今のところ)経験できない。

本作を観ながら思ったのは、人間誕生のメカニズムの神秘さだ。生物が持続的に繁栄していくためには雌雄の交わりが基本であり、その後の生育過程を含め人間が動物であることを認識する瞬間だ。妊娠以降もつわりや陣痛という症状があり、赤ちゃんを生むのは並大抵のことではないと女性には恐れ入る。

『ポッド・ジェネレーション』は、妊娠期間を、持ち運び可能な卵型の《ポッド》で胎児を育てることが可能な、近未来を描いたファンタジー映画である。妊娠期間の40週が無ければ、女性のキャリアが中断することがない上、男性にとっても妊娠期間の負担が分担できるという理屈だ。

ハイテク企業に勤める卵子側の妻レイチェル(エミリア・クラーク)は、会社から勧められるまま合理的判断で《ポッド》で胎児を育てることを決断する。一方胎児に対する精子側の夫・植物学者のアルヴィー(キウェテル・イジョフォー)は、自然妊娠を望んでいる。

私は2人の子どもの父親であるが、出産時に一緒に「スースーハァー」と付き添っていただけで、痛みを感じていたわけではない。胎児の成長を選択できるのであれば、当然奥さんの意見に従うだけである。

本作を観ていると、生命の誕生を含む人類の子孫に対する選択が果たして本当の幸福に繋がるのかが問われていると思う。うがった見方をすれば優性思想の究極の答えだ。考えさせられる映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (6)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る