岐阜新聞 映画部

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寛容だった日本の性文化、春画をじっくり見たくなる映画

2024年01月11日

春画先生

Ⓒ2023「春画先生」製作委員会

【出演】内野聖陽、北香那、柄本佑、白川和子、安達祐実
【原作・監督・脚本】塩田明彦

「ヘンタイ」があってもいいではないか

日本は古来から性的なことに関しては概ね寛容な国だったと言われている。江戸時代までは、銭湯は普通に混浴であったし、農村部では若い男が女性の寝床を襲う「夜這い」が行われ、都市部では性風俗も盛ん。戦国武将は「衆道」として主君と小姓の契りが結ばれ、町人でも同性愛が珍しくなかった。

井原西鶴の「好色一代男」は今で言えばエロ本とも言えるし、春画も「笑い絵」として普通に流通していて、葛飾北斎や喜多川歌麿などの浮世絵師も盛んに描いていた。ネットの情報だが、春画は江戸の町人文化の中心を占めていたらしい。版元もエロで儲けていたのだ。

風向きが変わったのは明治に入ってからで、富国強兵と国民道徳向上のもと、不健全とされるものはどんどん規制がはじまりタブーとされていったのだ。

『春画先生』を観ていると、江戸時代まであった寛容な日本の性文化が取り締まられるのと、戦争へ突き進んでいくのは密接に関連しているとわかってくる。一部の右翼的保守層がいう「美しい日本」的な道徳観念は、明治以降に形成された都合のいい押し付けなのだ。

映画で描かれるおおらかな性行為は、今の一般的な性的概念で言えば「ヘンタイ」と言われるものだと思うが、別に誰に迷惑をかけているものではない。もちろん合意があることが大前提なので、ジャニーズ問題は論外だが、こんな行為があってもいいではないか。

春画の大家・芳賀一郎(内野聖陽)が、スマホで他人の行為の声を聞きながら性欲を感じるなどはテレホンSEXとして昔からあったし、いい加減な門弟・辻村俊介(柄本佑)のバイセクシャルぶりは、まさに江戸時代の色男である。それにしても映画でたびたび見る柄本佑君のお尻は形もよくきれいだ。

春野弓子役の北香那さんの脱ぎっぷりはいさぎよいし、家政婦役の日活ロマンポルノの女王・白川和子さんの色気はまだまだ健在だ。

春画をじっくりみたくなってくる映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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