岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

少年たちの悲運のラブストーリー

2023年12月26日

シチリア・サマー

© 2023 IBLAFILM srl

【出演】ガブリエーレ・ピッツーロ、サムエーレ・セグレート、シモーナ・マラート、ファブリツィア・サッキ、アントーニオ・デ・マッテオ、エンリコ・ロッカフォルテ、ジュゼッペ・スパータ、アレッシオ・シモネッティ、シモーネ・ラッファエーレ・コルディアーノ、ジュディッタ・ヴァジーレ、ロベルト・サレーミ、アニータ・ポマーリオ
【監督・脚本】ジュゼッペ・フィオレッロ

繰り返さないため新たな扉を開くための道標

映画は実話をもとにしている。

1980年、イタリア・シチリア島の東海岸にある小さな田舎町ジャッレで起きた悲劇ー10月31日の夜、地元に住む羊飼いが、檸檬の木の下で、事切れているふたりの若い男を発見するー25歳のジョルジョ・アガティーノ・ジャンモナと15歳のアントニオ・"トニ" ・ガラトラ。ふたりの遺体は手を取り合い向き合うように横たわっていたという。

発見当初から何者かによる他殺と確認されていた。しかし、ふたりの死は事件として扱われる事なく自殺として処理された。

地元ではふたりは同性愛者=恋人たち(iziti)と知られ、不当な差別を受けていたという。

『シチリア・サマー』は、この "ジャッレ事件" を下敷きにしたラブストーリーである。

1982年、シチリアのとある村。世間は開催中のワールドカップでざわめき立っている。

村のバイクの整備工場で働く17歳のジャンニは、近くのカフェを溜まり場にする連中にからかわれている。「ジャンニちゃん」と呼んだり、執拗な絡みから、噂の張本人や力関係が何となく分かり、ジャンニの性的な秘密が次第に明らかになる。

家業の花火屋を手伝う16歳のニーノは、祖父と兎狩りに出かけたり、弟と戯れる様子からは、まだ、幼さが見える少年。喘息持ちの父を労り、花火師の仕事を一人前にこなそうとする。

そんなふたりが、バイクの接触事故で運命的な出会いをする。

ニーノは、くせ毛で細身の幼さを残す少年の典型。ジャンニは少し大人びたセクシーさを醸し出す。バイクの2人乗り、水場の戯れ、ふたりの距離は次第に狭まり、一気に溢れ出す瞬間が美しい。

LGBTQの意識が高まる中、少し前の(時間的にはつい最近の)悲劇を振り返る映画が続けて公開されている。今を理解するため、新たな扉を開くため、振り返ることの重要性を感じる。悲劇を繰り返さないために…。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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