岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

淡く切ない初恋と悲劇的な結末を描いた純愛映画

2023年12月26日

シチリア・サマー

© 2023 IBLAFILM srl

【出演】ガブリエーレ・ピッツーロ、サムエーレ・セグレート、シモーナ・マラート、ファブリツィア・サッキ、アントーニオ・デ・マッテオ、エンリコ・ロッカフォルテ、ジュゼッペ・スパータ、アレッシオ・シモネッティ、シモーネ・ラッファエーレ・コルディアーノ、ジュディッタ・ヴァジーレ、ロベルト・サレーミ、アニータ・ポマーリオ
【監督・脚本】ジュゼッペ・フィオレッロ

打ち上げ花火のように大輪の花を一瞬輝かせる2人

同性愛者に対して恐怖や嫌悪といった否定的な感情を持つことを【ホモフォビア】という。また男性同士の社会的つながりを【ホモソーシャル】というが、これはミソジニー(女性蔑視)とホモフォビア(同性愛嫌悪)をベースにしたマチスモ(男性優位主義)であることが多い。

本作は1982年のワールドカップの優勝で沸き立つイタリア・シチリア島を舞台に、打ち上げ花火職人の父を持つ明るく素直な16歳の少年ニーノ(ガブリエーレ・ピッツーロ)と、シングルマザーに育てられ整備工場で働く内気な17歳の少年ジャンニ(サムエーレ・セグレート)の、淡く切ない初恋と悲劇的な結末を描いた純愛映画である。

冒頭はニーノと叔父のウサギ狩りのシーンから始まる。銃を扱ったり死んだウサギをとってこさせたりと、男らしさを教え込もうとしている。頼りない男と見られている喘息もちのニーノの父に対し、叔父がマッチョイムズを見せているのだ。

一方でホモソーシャルの仲間から口紅を塗りたくられて「いじられている」ジャンニは、無抵抗になされるがままだ。

そんな2人がバイク同士の衝突事故から親しくなり、2人だけで過ごす時間を楽しむようになる。

美しいシチリアの風景の中、少年同士が親し気に遊ぶ姿は微笑ましくもあり美しくもある。

しかし「抱擁する2人を見た」という知人からの知らせを聞いたニーノの母は動揺し、2人の特別な気持ちを察したジャンニの母は、「息子さんはまだ引き返せます」と電話で告げる。

無理矢理引き離された2人の切なさと、再会したときの感情の高ぶりをみると、真実の愛とはいったい何なのかをつくづく考えさせられる最終章である。最後は銃声が聞こえ悲劇的に終わる。

2人の美しい少年が、打ち上げ花火のように大輪の花を一瞬輝かせ、儚くシチリアの夜空に消えていく。2人の死がLGBTI団体の設立のきっかけになったことは、せめてもの救いである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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