岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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権力と闘う信念の女性の生き様で描く政治映画

2023年11月29日

私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?

©2022 le Bureau Films - Heimatfilm GmbH + CO KG – France 2 Cinéma

【出演】イザベル・ユペール、グレゴリー・ガドゥボア、フランソワ=グザヴィエ・ドゥメゾン、ピエール・ドゥラドンシャン、アレクサンドリア・マリア・ララ、ジル・コーエン、マリナ・フォイス、イヴァン・アタル
【監督】ジャン=ポール・サロメ

凛としたイザベル・ユペールの秀抜な名演

東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故以来、その安全性や放射能の脅威は、危機として、ニュース、話題となってきた。 最近では、増え続ける放射性部質が残存する冷却水の処理に関する情報をよく耳にするし、もうひとつの課題、原子力発電で発生する放射性廃棄物の処理問題も議論されている。

少し昔の話、使用済核燃料は、再処理により再利用できるようになる、という魔法の如き "核燃料サイクル" が公言される時期があった。廃棄物が再び燃料となる一石二鳥の上手い話?

国内では青森の日本原燃六ヶ所村再処理工場が担うことになっていたが、この工場は何故か、今も遅々として正常な機能が果たせないままの状態が続いている。

そこで模索されたのが、使用済核燃料の外国への委託=輸出。フランスの企業アレバの名前はその時に聞いた。

モーリーン・カーニーは、1956年アイルランドの労働者運動に熱心な家に生まれた。高校生の頃からフェミニストの活動家となり、83年の結婚後、渡仏し、コゲマ社で海外勤務をする技術者に英語を教える仕事をしていた時、技術者候補生が不当に解雇される事実を知り、労組運動に参加するようになった。

そして、2004年、フランスの世界最大の原子力企業 "アレバ" (コゲマの親会社)のフランス民主労働組合連盟(=CFDT)の代表に就任した。

2011年、フランス電力(EDF)が極秘裏に進めている中国の総合原子力発電所公司(CGNPC)との取引があることを知る。これは機密性の高い技術を移転させるというもので、技術と雇用の流失を意味し、アレバの5万人の従業員に影響を及ぼすことは必至だったーならば、モーリーンは内部告発者として立ち上がる。

会社の一方的な否定、政治的な圧力、脅迫、スリラーを思わせる怖い展開が、実話であること聞き背筋が凍る。そして、権力が向かっている方向を見極め、正しく導くのは個人の地道な運動からはじまることをあらためて思い知る。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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