岐阜新聞 映画部

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モーリーンさんと権力側との闘いを描いた実話の社会派映画

2023年11月28日

私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?

©2022 le Bureau Films - Heimatfilm GmbH + CO KG – France 2 Cinéma

【出演】イザベル・ユペール、グレゴリー・ガドゥボア、フランソワ=グザヴィエ・ドゥメゾン、ピエール・ドゥラドンシャン、アレクサンドリア・マリア・ララ、ジル・コーエン、マリナ・フォイス、イヴァン・アタル
【監督】ジャン=ポール・サロメ

実名で出てくる、会社・CEO・政治家たち

フランスの労働組合組織率は先進国の中では最も低く、全セクターで7~8%と推計される。これは労働組合が日本のような企業別ではなく産業別になっているのと、労使の交渉結果(労働協約)が組合員か非組合員かを問わず、全産業の労働者に適用されるからである。

本作の主人公であるモーリーン・カーニー(イザベル・ユペール)は、全国的なナショナルセンターの中で戦闘的なCGT(労働総同盟)と組合員数のトップを争う労使協調路線のCFDT(民主労働組合連盟)のアレバ社代表である。

そのアレバ社は、当時世界最大の総合原子力企業で国有会社。フランスは電力の約75%を原発に依存している世界第2位の原発大国であるが、アレバ社は福島第一事故などによる外部環境の悪化で業績不振となっていた。

本作はそんな中での2012年12月17日に起こった性的暴行事件を中心に、モーリーンさんと権力側との闘いを描いた実話の社会派映画である。

日本でも性的暴行を受けたジャーナリストの伊藤詩織さんや自衛官の五ノ井里奈さん、ジャニーズの被害者らがバッシングを受け二次被害に合っているが、モーリーンさんも自作自演だとする精神的暴力にみまわれた。

実際のモーリーンさんはメンタル面を壊されうつ病を発症したのだが、演じるのは何しろイザベル・ユペールだ。

アカデミー賞にノミネートされた『エル ELLE』(2016)では、レイプされても平然としており、冷静に着実に執拗にレイプ犯に迫っていく役を演じて強烈な印象を残したが、本作でも中国とのハイリスクな技術移転契約を内部告発した結果、屈辱的な性的被害を受けるも、思いもかけないバッシングに対してちょっとやそっとじゃへこたれない強い女性を演じている。当たり役である。

映画はサスペンスフルで、実名で出てくる会社もCEOも政治家も容赦なく悪役にされるなど、娯楽映画としても大変よく出来ている。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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