岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ひとりの男にかき乱される女たちの愛憎劇

2018年04月12日

The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ

©2017 Focus Features LLC All Rights Reserved

【出演】ニコール・キッドマン、キルスティン・ダンスト、エル・ファニング、コリン・ファレル
【脚本・監督・製作】ソフィア・コッポラ

ソフィア・コッポラの成熟を感じさせる上質のスリラー映画

 ソフィア・コッポラ監督が昨年のカンヌ映画祭で監督賞を受賞した『The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ』は、ドン・シーゲル監督、クリント・イーストウッド主演の『白い肌の異常な夜』(1971年)と同じ原作の映画化である。しかし、ストーリーは同じだが、映画から受ける印象はまったく異なっている。前作のサイコ・ホラー的なエキセントリックさは影を潜め、エレガントな心理スリラーの趣がある。
 南北戦争下、アメリカ南部の世間から隔絶された女子寄宿学校に暮らす先生と生徒。そこに、敵の北軍負傷兵が運びこまれるところから物語は始まる。この男の存在に心かき乱される寄宿学校の女性たちの心理描写は丹念で、異常心理とは一線を画する説得力がある。演じるニコール・キッドマン、キルスティン・ダンスト、エル・ファニングも好演。また、彼女たちに手当てを受けかくまわれる兵士を演じるコリン・ファレルは、イーストウッドのようなタフガイではなく、むしろモンゴメリー・クリフトのような女性たちを虜にするセンシティブな魅力に溢れている。
 撮影監督フィリップ・ル・スールによる、 自然光のみで撮影されたという映像の美しさは特筆もので、作品のミステリアスな雰囲気を際立たせている。
 ソフィア・コッポラの映画作家としての成熟を感じさせる上質のスリラー映画であった。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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