岐阜新聞 映画部

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山田洋次監督 渾身の下町喜劇

2023年11月14日

こんにちは、母さん

©2023「こんにちは、母さん」製作委員会

【出演】吉永小百合、大泉洋、永野芽郁 ほか
【監督】山田洋次

吉永小百合の自然体でも艶やかな女ぷりが美しい

今年9月で、92歳になった山田洋次監督の新作登場。

主演の吉永小百合とは『母べえ』(2008年)、『母と暮らせば』(2015年)に続く3度目の顔合わせで、"母3部作" という括りの第3作となる。

舞台となるのは東京向島。山田監督の第2作『下町の太陽』(1963年)、圧倒的な代名詞のような代表作『男はつらいよ』(1965~95年/特別編97年)と重なる。

会社では人事部長として組織と社員の矢面に立ち、神経を擦り減らすような毎日を送り、家では妻との確執、大学生の娘との関係に悩んでいる昭夫(大泉洋)が、久しぶりに実家に帰って来る。

夫、亡き後も足袋屋の暖簾を守っている母の福江(吉永小百合)が迎えたくれる…が、地味な割烹着姿がお洒落なエプロンに変わっていたり、ちょっとした仕草にも違和感を感じ、母の異変に気づく。

母の活気溢れる生活ぶりの変化には、どうやら恋が関係していることを知り、実家にすら自分の居場所がないことに戸惑う昭夫だったが、そんな心配をよそに、顔なじみの下町のご近連中の "アツ" 強目のお節介に巻き込まれていく。

原作は永井愛の同名戯曲で、2001年東京新国立劇場で初演されている。母・福江は加藤治子、息子・昭夫は平田満、母の恋人・直文は杉浦直樹が演じた。永井愛は演出も担当し、紀伊國屋演劇賞では加藤治子が個人賞を受賞。数々の演劇賞にも輝くなど高い評価を受け、2004年には再演されている。また、2007年にはドラマ化(NHK土曜ドラマ)もされているが、こちらには設定に多少の脚色が加えられている。

映画にはシーンの合間合間に "カラショット" と呼ばれる風景描写を挿入する、松竹=小津映画調の味付けもされ、山田監督の原点回帰の心意気を感じる作風になっている。

喜劇の醍醐味でもあるディスカッションならぬ雑談のアンサンブルも快調だが、所々に変な緊張感が生じ、少しリズムが乱れるのが惜しい。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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