岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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人生の最期をどう迎えるかを問う誇らしきロードムービー

2018年04月10日

ロング,ロングバケーション

© 2017 Indiana Production S.P.A.

【出演】ヘレン・ミレン、ドナルド・サザーランド、クリスチャン・マッケイ、ジャネル・モロニー、ダナ・アイヴィ
【監督】パオロ・ヴィルズィ

自分の意志で人生を選択する権利がある

 年代物だが、みんなの憧れのキャンピングカーでボストンからフロリダのキーウェストを目指す、まだらボケの夫ジョン(ドナルド・サザーランド)と末期がんの妻エラ(ヘレン・ミレン)との最後の長い旅路。老いることの現実と生きることの気高さを、時におおらかに、時に残酷に描き出した本作は、人生の最期をどう迎えるかを我々に問う、誇らしきロードムービーだ。
 ヘミングウェイの研究者で大学教授だったジョンは、普段の言動や行動はボケていても、自分の栄光時代は鮮明に覚えており、ウェイトレスに文学論を説いたり、昔の教え子と邂逅するときなど別人のようである。
 一方、妻のエラはそんな夫を支えつつ、末期がんといえどエネルギーに満ち溢れている。若かりし頃の恋人が黒人のヒッピーだったり、民主党支持の夫に対してレーガンに投票しようとするなど、確固とした意志を感じていい意味で先進的だ。旅先でアルツハイマーの夫が共和党支持者に交じって「USA!USA!」と連呼するところなど、今の時代を皮肉るとともに、夫の妻へのほのかな愛を感じて微笑ましい。オートキャンプ場では、エラが家族の写真をスライド上映して半生を振り返る。居合わせた見知らぬ人たちからの声援は、ふたりの人生が豊かなものであったと感じさせてくれるいい場面である。
 そして、映画の後半で出てくる老人ホームのシーンからは、死は待つのでなく、人生の終焉まで自分の意志で人生を選択する権利があるのだとのテーマが浮かび上がってくる。ジョンがまだ元気だった頃、「施設に入る時はショットガンを握らせてくれ」とエラに言っているが、まさに猟銃自殺をしたヘミングウェイの最期とかぶさってくるのである。
 82歳のドナルド・サザーランドと72歳のヘレン・ミレン。年相応の役で主演する2人の名優のしわ一本一本に、長きにわたる活躍の年輪を感じ、味わい深い映画となっている。

『ロング,ロングバケーション』は岐阜CINEXほか、全国公開中。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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