岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ワケあり老夫婦の珍道中ロードムービー

2018年04月10日

ロング,ロングバケーション

© 2017 Indiana Production S.P.A.

【出演】ヘレン・ミレン、ドナルド・サザーランド、クリスチャン・マッケイ、ジャネル・モロニー、ダナ・アイヴィ
【監督】パオロ・ヴィルズィ

人生を振り返る大切な時間

 「珍道中」シリーズは1940年代に、ビング・クロスビー、ボブ・ホープ、ドロシー・ラムーアの主演によって人気を博したコメディ映画で、ロードムービーの古典と言われている。我々の世代では、70年代に『スケアクロウ』(ジェリー・シャッツバーグ監督)や『ハリーとトント』(ポール・マザースキー監督)といった名作に出会っているので、映画のジャンルとしてのロードムービーを認識したのもその頃。勿論、それ以前にも『イージー・ライダー』(デニス・ホッパー監督)や『真夜中のカーボーイ』(ジョン・シュレシンジャー監督)があるが、こちらは“アメリカン・ニューシネマ” の枠で語られることが多い。日本映画でも山田洋次の『家族』や『幸福の黄色いハンカチ』があり、いずれも優れたロードムービーとして評価されている。アメリカの娯楽雑誌「エンターテインメント・ウィークリー」が選出したロードムービー傑作30では、『オズの魔法使』(ヴィクター・フレミング監督)や『恐怖の報酬』(アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督)が選ばれていて、それぞれミュージカル、スリラー映画の代表作でもあるから、映画をジャンル分けするのは、あまり意味のないことに思えてくる。とは言え、旅には郷愁を誘う、人と場の出会いがあり、欠くことのできない映画の題材であることに変わりはない。
 『ロング,ロングバケーション』は、いきなり家出からはじまるロードムービー。ジョン(ドナルド・サザーランド)は、元教授でアルツハイマー病が進行中。妻のエラ(ヘレン・ミレン)は、そんな夫と半世紀にわたり連れ添い、子どもたちも巣立ちさせたが、自らも末期ガンに侵されている。目指すはジョンが敬愛する、ヘミングウェイが暮らした“キーウェスト”。愛車のキャンピングカーで旅は始まる。
 ワケありの老夫婦の珍道中を同情的なお涙頂戴ものにすることなく、ユーモラスに描くことは、所詮は映画の中の綺麗事とも取られかねないが、人生を振り返る瞬間を与えてくれることも、また映画の使命。これはそういう作品。

『ロング,ロングバケーション』は岐阜CINEXほか、全国公開中。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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