岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

瑞々しく多幸感に溢れた自伝的青春映画

2023年10月23日

まなみ100%

©「まなみ100%」フィルムパートナーズ

【出演】青木柚、中村守里、伊藤万理華、宮﨑優、新谷姫加、菊地姫奈、下川恭平、藤枝喜輝、諏訪珠理、日下玉巳、野島健矢、髙橋雄祐、詩野、濱正悟/オラキオ
【監督・原案・編集】川北ゆめき

青木柚君の自然体な演技と、中村守里さんの凛とした佇まい

『まなみ100%』は、ワチャワチャした高校時代に始まりヒリヒリした大学時代を経てギトギトした今を描く、愛と青春のクロニクル映画である。

  主役は「ボク」。すべての時代に共通するのは、情熱はあるが空回り気味で、女関係にはだらしないクズ野郎なのだが、独特の自己肯定感からくる「人たらし」たる部分だ。ダメ人間なのに、ピンチになると必ず助けがやってくる。ようするに彼が人を嫌わず信用し上手に人に頼れているからなのだ。

さらに瀬尾先輩の死という不幸がありながら映画が全体的に多幸感に包まれているのは、奇をてらわないオーソドックスな演出と、観ていて心地よい編集はもとより、主役の「ボク」を演じる青木柚君の伸びやかで自然体な演技と、永遠のマドンナ役「まなみ」を演じる中村守里さんの凛とした佇まいが大きい。

第77回CINEX映画塾では、監督の川北ゆめきさんと主演の2人に来てもらいトークショーに参加していただいた。そこで分かったのは、本作は完全に川北ゆめき監督の自伝であるということだ。

自分自身を主役にした映画を作るのは難しいし気恥ずかしさもあると思うが、川北監督は自分を着飾ることなくダメっぷりを自虐的に描いている。しかしそんな自分が好き、ということもよくわかり共感を呼ぶのだ。

私は本作の鑑賞1回目を名古屋での封切り直後に観ているが、賢明なのは、ベテランのいまおかしんじさんに脚本を任せた点。独り善がりにならず客観性が出ているのと、あれもこれもでなくエピソードが整理されていることだ。1時間41分という丁度良い上映時間に収まっているのも潔い。

さらに驚くのは、ほぼ全員が実在の人物で本名と役名が同一であることと、エピソードも実録だということ。もちろん許可をとったらしいが、川北監督だから2つ返事でOKしたのだと推測できる。

川北監督にとっては現在進行形の、瑞々しく多幸感に溢れた青春映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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