岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

暢気なユーモアが緊張に変わるロードムービー

2023年09月26日

君は行く先を知らない

©JP Film Production, 2021

【出演】モハマド・ハッサン・マージュニ、パンテア・パナヒハ、ラヤン・サルラク、アミン・シミアル
【監督・脚本・製作】パナー・パナヒ

開かれた自由を希求する 映画ができる事

イランの名匠ジャファール・パナヒは、1995年に『白い風船』で監督デビューをしている。脚本はイラン映画界の巨匠アッバス・キアロスタミが手がけた。

この作品はカンヌ映画祭と東京映画祭で、新人監督に与えられる、カメラドール賞とヤングシネマ東京ゴールド賞を受賞した。

その後も、『チャドルと生きる(2000年/日本公開02年)、『人生タクシー』(2015年/日本公開16年)、『ある女優の不在』(2018年/日本公開19年)などの作品を発表して、高い評価を受けている。

一方、イラン国内では、『チャドルと生きる』と2006年に発表した『オフサイド・ガールズ』(日本公開07年)が、何れも上映禁止の処分を受けている。2作はともに懸命に生きる女性を主人公にしたおり、当時のイランの政治体制を批判した内容が問題視された。2010年には、保守派の政権により拘束されてしまう。

この年、パナヒ監督はカンヌ映画祭の審査員に選ばれていたが、この逮捕により出席はかなわなかった。映画祭に出席した世界の映画人は、イラン政府に抗議するとともに、早急な解放を要求している。

その直後に拘束は解かれたが、禁錮6年の判決が下り、さらに20年間に渡る映画製作、脚本の執筆、海外渡航とメディア対応の禁止という、まったく理不尽な迫害を受けている。

『君は行く先を知らない』のパナー・パナヒ監督は、ジャファール・パナヒ監督の息子で、テヘランの芸術大学で映画製作を学んだ後、父の現場で実践を経験した後の、長編デビュー作となる。

荒涼とした大地を走る車。運転しているのは一家の長男。後部座席には家長の父が、傍若無人にはしゃぐ、まだ幼い次男に手こずっている。助手席には寡黙な母。幾つかのアクシデントに遭遇する、ユーモア溢れるロードムービーに見えるが、行く先と目的は…正にパナヒの血をひく、現状告発の厳しさに満ちている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (8)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る