岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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引きこもりのフリーターがヒッチハイクで旅をする

2023年09月20日

658km、陽子の旅

©2022「658km、陽子の旅」製作委員会

【出演】菊地凛子、竹原ピストル、黒沢あすか、見上愛、浜野謙太、仁村紗和、篠原篤、吉澤健、風吹ジュン、オダギリジョー
【監督】熊切和嘉

ツッコミどころ満載の力作

本作の主人公・陽子(菊地凛子)は42歳。年齢から換算すると1980年生まれなので、就職氷河期世代(1971年~84年頃生まれ)だ。バブル世代(1965年~69年頃生まれ)の先輩と、ゆとり世代(1987年~2004年頃生まれ)の後輩に挟まれた、別名「失われた世代」である。

親の反対を押し切って、夢を持って東京へ出てきたのが18歳。しかし1998年は就職氷河期真っただ中、おそらく就職が上手くいかなかったのだろう。42歳の陽子は引きこもりのフリーターで、コミュニケーションが苦手。でも今の時代、パソコン1つとネット環境さえあれば在宅で仕事が出来るし、ネットで大よそのものは注文できるうえ自宅まで配達してくれるので、引きこもりでも一人暮らしができるのだ。そんなに悪くない。

20数年間疎遠だった父親が亡くなったということで、従兄の茂(竹原ピストル)に半ば強引に車に乗せられる。引きこもっているが困っているわけではないのに無理矢理引きずり出されたようで、ちょっと押し付けがましい。

途中の栃木県のサービスエリアで陽子が置いてけぼりになるくだりは、そのためだけに茂の息子に怪我をさせるような段取り芝居となっており、突っ込みたくなってくる。

その後ヒッチハイクするわけだが、トイレしかない人気のないパーキングエリアで降ろされたり、肉体関係を迫られるという予想の範囲内のアクシデントに見舞われる。そもそもコミュニケーション力がゼロに近いのに、割と次々とヒッチハイクに成功するのは、ルックスしかない。

上映時間1時間53分のロードムービーで、658km先の青森に向かって行くのだが、映画の3分の2を過ぎても、親切な夫婦に助けられたのは福島県の富岡町。地図的には、青森でのお父さんの出棺にもう絶対間に合わないと私は確信していたが、途中でワープしたのか間に合っちゃったのだ。

ツッコミどころ満載の力作だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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