岐阜新聞 映画部

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クローネンバーグ、原点回帰の純正ボディホラ―映画

2023年09月19日

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー

© Serendipity Point Films 2021

【出演】ヴィゴ・モーテンセン、レア・セドゥ、クリステン・スチュワート
【監督・脚本】デヴィッド・クローネンバーグ

強烈なビジュアルイメージ、トラウマになりそう

「身体が極度に変容したり破裂したりする様子で、恐怖を表現するホラー映画」を、ボディホラー映画と言う。最近では、2021年のカンヌ映画祭でパルムドールに輝いた『TITANE/チタン』が有名で、「キャデラックを相手にヒロインが妊娠する」という、私の理解の範囲を超えた映画だった。

そんな怪作が最高賞を獲ったことに影響されたわけではなかろうが、ボディホラー映画の大家で、ヘンな映画のオーソリティである鬼才デヴィッド・クローネンバーグの8年ぶりの新作は、原点回帰の純正ボディホラー映画だった。

私のクローネンバーグ原体験は、超能力によって頭部を内側から破裂させられる『スキャナーズ』(1980)や、遺伝子組み換えの実験ミスで科学者がハエ男になってしまう『ザ・フライ』(1986)だが、またしてもビジュアルイメージが強烈で、誰も考えつかないような奇妙奇天烈な設定の怪作が誕生した。

「生物の進化は、環境への適応がもたらす」ことをシニカルに捉えたクローネンバーグの未来予想図は、「痛みは消え去り、一部の人間は体内で新たな臓器を生み出すことができる。プラスチックを主食とする人間も現れる」という世界だ。

主人公は、体内で臓器が生み出される「加速進化症候群」に悩まされるも、その臓器を摘出するパフォーマンスショーで生計を立てているソール・テンサー(ヴィゴ・モーテンセン)と、パートナーのカプリース(レア・セドゥ)。IPS細胞が発展していくと、こういう変異が生まれるのかも?イヤイヤ、これは神の領域だ。

ビジュアルは凄くて、絶対くつろげないだろう妖怪の手と足みたいな椅子に、落ち着いて寝られやしない特注品のベッド。映画のストーリーはそのうち忘れても、この奇妙な家具はトラウマになって、頭の中に残るに違いない。

しかし80歳になっても、枯れるどころか益々意気盛んなクローネンバーグ。頭の中を見てみたい。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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