岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

絶望の中に希望が見えてくる。パワフルなアルジェリア映画

2023年09月05日

裸足になって

©THE INK CONNECTION - HIGH SEA - CIRTA FILMS - SCOPE PICTURES FRANCE 2 CINÉMA – LES PRODUCTIONS DU CH'TIHI - SAME PLAYER, SOLAR ENTERTAINMENT

【出演】リナ・クードリ、ラシダ・ブラクニ、ナディア・カシ
【監督】ムニア・メドゥール

ダンスに言語はいらない。手話と踊りで蘇る

本作の舞台は、アフリカ北部・地中海に面するアルジェリアだ。

私が今まで見た映画の中でのアルジェリアは、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督、ジャン・ギャバン主演でカスバの街が舞台の犯罪映画『望郷』(1937/キネ旬1位)や、ルキノ・ヴィスコンティ監督、マルチェロ・マストロヤンニ主演で、カミュ原作の不条理劇『異邦人』(1967/キネ旬8位)、ジッロ・ポンテコルヴォ監督が、フランスから独立するための戦争を描いた『アルジェの戦い』(1966/キネ旬1位)だ。

もしかしたらそれ以上に、1955年にエト邦枝の歌唱で発表され、その後多くの歌手がカバーした「カスバの女」の中の歌詞「ここは地の果てアルジェリヤ」の強烈なフレーズのイメージかもしれない。

『裸足になって』は、アルジェリア出身のフランス人ムニア・メドゥール監督の、フランス=アルジェリア共同制作の映画である。アルジェリア人の監督が作った現代のアルジェリアが舞台の映画は珍しい。少なくとも監督の前作(未見)しか知らない。

主人公のフーリア(リナ・クードリ)はバレエダンサーだ。女性差別が顕著で女性の社会進出が進んでいかないアルジェリアの中では、自立した女生と言える。貧しい中でも、闘羊の賭け事で儲けて家計を助けようとするが、負けた相手の男の逆恨みで怪我を負い、踊ることと声を出すことが失われてしまう。

絶望の淵にある彼女が、アルジェリアに見切りをつけるのでなく、とどまって手探りで希望を見出していく。スペインへ逃れようとして死んでしまった友人を悼みつつも、アルジェリアでかすかな光が見えてくる。

リハビリで出会った、ろう者の女性たち。ダンスに言語はいらない。フーリアが彼女たちに教えることで、再び生きる希望をもつ。手話と踊り。彼女の持ち前の明るさと前向きなパワーが蘇っていくのをみていると、こちらもパワーを貰えるのだ。パワフルな映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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