岐阜新聞 映画部

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フランスを変えた女性政治家、シモーヌ・ヴェイユ

2023年08月28日

シモーヌ フランスに最も愛された政治家

© 2020 – MARVELOUS PRODUCTIONS – FRANCE 2 CINÉMA – FRANCE 3 CINÉMA

【出演】エルザ・ジルベルスタイン、レベッカ・マルデール、オリヴィエ・グルメ、エロディ・ブシェーズ
【監督・脚本】オリヴィエ・ダアン

ジャンヌ・ダルクのようなシモーヌ

今年2月にCINEXで公開された『あのこと』は、1960年代のフランス女性が、予期せぬ妊娠に一人で闘っていく姿を、言葉では言い表せないほどの臨場感で寄り添うように描いた映画だった。

本作の主人公、シモーヌ・ヴェイユ(1927-2017)は、カトリック教会や保守派の男性議員などの激烈な反対意見に立ち向かうなどし、人工妊娠中絶合法化(ヴェイユ法)は、1974年、賛成284票、反対189票で可決、翌1975年に施行された。

本作を見てシモーヌの生い立ちや女性解放のための活躍を初めて知ったが、思い出すのは私が選挙権を得た初めての参院議員選挙全国区で、87歳でトップ当選した市川房枝(1893-1981)だ。日本の婦人参政権運動や公娼廃止運動の草分けで、すでに教科書に乗るような伝説の人だった。おそらく今でも女性政治家としての人気はトップクラスだろう。

シモーヌを演じるのは、1965年までがレベッカ・マルデール(28)、1968年からがエルザ・ジルベルスタイン(55)。年齢相応の役者が配置されているので無理がない。

人気の政治家だし、収容所で両親と兄を失ったアウシュヴィッツの生還者でもあるので、嫌な面が描かれているとは思えないが、この映画でそれは望んでない。あくまでもシモーヌが、フランスの女性解放に関しての功績や、家庭をもって子育てをしながらの政治活動の苦労がわかればそれでいい。

本作は、丹念にシモーヌの足跡を追っている。人工妊娠中絶に対して理解がなく理屈の通じない人々に女性の権利を主張していく姿は、ジャンヌ・ダルクのようだ。

彼女の夫は基本的に理解のある方だが、シモーヌが保険大臣となって多忙を極めているとき、夫が「子どもたちを顧みろ」と苦言を呈した際に、子どもたちは「ママを誇りに思う」とかばう。素敵なシーンだ。

フランスを変えたシモーヌ、有能で魅力的な女性政治家である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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