岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品CLOSE/クロース B! 純真ゆえの残酷に直面する鮮烈な青春映画 2023年08月21日 CLOSE/クロース © Menuet / Diaphana Films / Topkapi Films / Versus Production 2022 【出演】エデン・ダンブリン、グスタフ・ドゥ・ワエル、エミリー・ドゥケンヌ 【監督】ルーカス・ドン レオとレミの美しき日々を忘れないために閉さない(=クロース)ために 子どもは残酷だと言う。 まだ幼い子どもは、虫をわざと踏み潰したり、手で握りつぶしたりの、残酷な行為を平気ですることがある。 それは幼い子どもが、命の大切さを理解していないことで、命あるものを玩具などの "モノ" と同様に扱うために起きる行為でもある。 それでも子どもは、成長する過程で、叱られたり、褒められたりを繰り返し、善悪を区別する判断力="物差し" を獲得する。 レオ(エデン・ダンブリン)とレミ(グスタフ・ドゥ・ワエル)は、幼い頃から一緒に過ごすことが多く、まるで兄弟のように親密な関係にある。 秘密基地のような場所で、レオの家が営む花の農園で、ふたりは無邪気に戯れる。 レオの母親が「今夜もレミの家に泊まるの」と呆れてかけた言葉通りに、レオはレミの部屋で体を寄せ合うようにして眠る。 それは、特別なことではなくて、繰り返されてきた日常に過ぎない。 13歳になったふたりは、新たな学校=学年を迎える。華やいだ賑やかな雰囲気。そこで注がれる好奇の視線。 「ふたりは付き合っているの?」 何気ない問いかけに一瞬、戸惑う。当たり前だったふたりの関係性に、突然投げ込まれた異物。それに微妙に敏感に反応するのはレオだった。 監督のルーカス・ドンは、1991年ベルギー生まれ。2018年『Girl/ガール』(日本公開2019年)が長編デビュー作。バレリーナになりたい、トランスジェンダーの15歳の少女(体は男性)の苦悩と夢に向かう切実な思いを鮮烈に描き、同年のカンヌ映画祭でカメラドール(=新人監督賞)を受賞している。 本作にもある、少年期の純真な残酷さは、共通する物語のモチーフとなっている。 接近と傍観の遠い視線、陽光の明と夜の部屋の闇、自転車の疾走の動と苦悩を意味する動かない静、さり気ないお喋りと深い沈黙。めりはりのある演出が素晴らしい。残酷だか美しい傑作である。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (10)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月06日 / 幸せのイタリアーノ 嘘からはじまるロマンチックコメディ 2024年09月06日 / 愛に乱暴 真面目に生きてきた女性が壊れる 2024年09月06日 / 愛に乱暴 人間の我慢の限界を描き、本質に迫った映画 more 2023年06月28日 / 神戸映画資料館(兵庫県) 長年眠っていた貴重なフィルム作品を発掘・上映する。 2020年10月14日 / シネマスコーレ(愛知県) 若松孝二監督が遺した学校という名の小さな映画館 2019年02月27日 / 延岡シネマ(宮崎県) 夏休み…映画館で買ってもらったお菓子の味を思い出す。 more
レオとレミの美しき日々を忘れないために閉さない(=クロース)ために
子どもは残酷だと言う。
まだ幼い子どもは、虫をわざと踏み潰したり、手で握りつぶしたりの、残酷な行為を平気ですることがある。
それは幼い子どもが、命の大切さを理解していないことで、命あるものを玩具などの "モノ" と同様に扱うために起きる行為でもある。
それでも子どもは、成長する過程で、叱られたり、褒められたりを繰り返し、善悪を区別する判断力="物差し" を獲得する。
レオ(エデン・ダンブリン)とレミ(グスタフ・ドゥ・ワエル)は、幼い頃から一緒に過ごすことが多く、まるで兄弟のように親密な関係にある。
秘密基地のような場所で、レオの家が営む花の農園で、ふたりは無邪気に戯れる。
レオの母親が「今夜もレミの家に泊まるの」と呆れてかけた言葉通りに、レオはレミの部屋で体を寄せ合うようにして眠る。
それは、特別なことではなくて、繰り返されてきた日常に過ぎない。
13歳になったふたりは、新たな学校=学年を迎える。華やいだ賑やかな雰囲気。そこで注がれる好奇の視線。
「ふたりは付き合っているの?」
何気ない問いかけに一瞬、戸惑う。当たり前だったふたりの関係性に、突然投げ込まれた異物。それに微妙に敏感に反応するのはレオだった。
監督のルーカス・ドンは、1991年ベルギー生まれ。2018年『Girl/ガール』(日本公開2019年)が長編デビュー作。バレリーナになりたい、トランスジェンダーの15歳の少女(体は男性)の苦悩と夢に向かう切実な思いを鮮烈に描き、同年のカンヌ映画祭でカメラドール(=新人監督賞)を受賞している。 本作にもある、少年期の純真な残酷さは、共通する物語のモチーフとなっている。
接近と傍観の遠い視線、陽光の明と夜の部屋の闇、自転車の疾走の動と苦悩を意味する動かない静、さり気ないお喋りと深い沈黙。めりはりのある演出が素晴らしい。残酷だか美しい傑作である。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。