岐阜新聞 映画部

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民族の違いを乗り越え子どもを守り抜く家族の歴史物語

2023年08月17日

キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩

©︎MINISTRY OF CULTURE AND INFORMATION POLICY OF UKRAINE, 2020 – STEWOPOL SP.Z.O.O., 2020

【出演】ヤナ・コロリョーヴァ、アンドリー・モストレーンコ、ヨアンナ・オポズダ、ポリナ・グロモヴァ、フルィスティーナ・オレヒヴナ・ウシーツカ
【監督】オレシャ・モルグネツ=イサイェンコ

美しい歌声の先に今の戦争を知るための真実が見えて来る

映画の題名になっている ”キャロル・オブ・ザ・ベル” は、ウクライナの民謡を元に、ウクライナの作曲家マイコラ・レオントーヴィッチ(マイコラはミコラあるいはニコライ、レオントーヴィッチはレオントヴィッチとも表記される)が、編曲した ”シュチェドルィック(シュドリック)” に、同じく作曲家のピーター・J・ウィルウフスキーが英語の歌詞をつけたもので、今日もクリスマスソングとして最もよく歌われている、1936年頃に成立した歌である。

アメリカ映画『ホーム・アローン』(クリス・コロンバス監督/1990年/日本公開91年)の中で歌われ、世界的に知られるようになった。

その3年後の1939年。ポーランド領スタニスワブフ=現・ウクライナ・イバノフランコフスコが舞台。

ユダヤ人一家シュコウィッツが母屋に住み大家となっている集合住宅に、ウクライナ人のミコライウナ一家と、ポーランド人のカリノフスカ一家が引越して来る。

民族の違う3つの家族は、少しの警戒心から、はじめは馴染めないでいるが、一同が会した夕食会の席で、ウクライナ人の娘ヤロスワラが披露した、歌うと幸せ訪れると信じている ”シュドリック=キャロル・オブ・ベル” の歌声に、打ち解ける瞬間を迎える。

しかし、穏やかな時間に暗雲が忍び寄る。

1939年の9月、ドイツとソ連のポーランド侵攻が始まる。

ソ連によるウクライナへの関与は1922年12月に、ソ連共和国として一方的に併合されたことを契機としているが、占領状態になったのは第二次世界大戦勃発直後のこの頃だった。

ユダヤ人一家はナチスドイツに、ポーランド人一家はソ連に迫害され、その追手から逃れた娘たちをウクライナ人の母ソフィアが、ひとり守り抜こうとする苦難の日々が描かれる。

ぎっしりと詰め込まれた侵攻迫害の歴史の根深さに気づかされ、現在、進行する戦争のことを考えるための一助となる力強い反戦映画である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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