岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

少年の脆さと残酷さを巧みに救い上げた傑作

2023年08月21日

CLOSE/クロース

© Menuet / Diaphana Films / Topkapi Films / Versus Production 2022

【出演】エデン・ダンブリン、グスタフ・ドゥ・ワエル、エミリー・ドゥケンヌ
【監督】ルーカス・ドン

親密さをセクシャル化して捉えてしまう社会規範

『クロース』の主役レオ君(エデン・ダンブリン)とレミ君(グスタフ・ドゥ・ワエル)は、中学へ入学したばかりの13歳の設定。子どもから大人へと成長する過渡期の入口、ボーイズからガイズに変わる頃である。

映画の前半はファンタジーだ。色とりどりのお花畑が広がる野原を颯爽と駆け回る2人。美しい自然の中を自転車で疾走するシーンの眩いばかりの光景。一緒のベッドで思い思いの姿で寝るレオとレミ。カメラは美少年同士の無垢な親密さを、優しいまなざしで追っていく。

誰にも言われず邪魔されなければ、この友情はいつまでも続いたに違いない。

そこに立ちはだかるのが、男同士の親密さをセクシャル化して捉えてしまう意識や社会規範。さらに言えば、「男は逞しくあらねばならない」などのマッチョイズムだ。

仲の良すぎる(これも他者による決め付けに過ぎないが)ことを、同級生の女子から「付き合ってるの?」と揶揄されて、初めて「世間からみたら同性愛」だと思われることに気づく2人。

そこから後半はシリアスな展開となってくる。

レオ君は、レミ君と本当は仲良しを続けたいのに、他の友だちにアイスホッケーに誘われてチームに入って練習を始める。それはあたかもマッチョを証明するかのようだ。

一方でレミ君は、あれだけ仲良くしていたレオ君がなんで距離を置くようになったのかわからない。前のままでいてくれたら、周りになんと言われようとへっちゃらなのに。

13歳の少年にとって、自分自身を貫くことはとっても勇気のいることだ。自分を裏切ってでも、マジョリティーの一員になることを選んでしまう。そうでもしなければ、バッシングに耐えられない。

この不合理さを、少年の目を通して寄り添うように描いていく。

映画は、主演する美少年俳優の刹那の輝き、脆さと残酷さを巧みに救い上げ、悲劇と再生を通して希望として描いている。少年映画の傑作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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