岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

女性2人寄ればホン・サンス映画

2023年07月25日

小説家の映画

© 2022 JEONWONSA FILM CO. ALL RIGHTS RESERVED

【出演】イ・へヨン、キム・ミニ、ソ・ヨンファ、パク・ミソ、クォン・ヘヒョ、チョ・ユニ、ハ・ソングク、キ・ジュボン、イ・ユンミ、キム・シハ
【監督・脚本・製作・撮影・編集・音楽】ホン・サンス

ゆるい会話に内包された苦くて怖い毒

韓国・ソウルから20キロほど東に位置する河南市は、ベッドタウンとして発展している閑静な町である。

作家として成功したジュニ(イ・へヨン)は、近頃、執筆が滞り、新作は一向に発表できないでいる。そんな時、気分転換を兼ねたものだろうか? 時間を持て余した気紛れ? かも知れないが、古くからの友人でありながら疎遠になっていた後輩を訪ねるため、河南へやって来る。連絡もしないで立ち寄った書店が後輩の経営する店だった。

ぎこちなく始まる女性2人の会話。引き気味のカメラが捉える店先の2人の女性。再会の感傷に浸るのでもなく、疎遠になった理由が明確になることもなく。そのうち手持ち無沙汰になる2人の他所ごとの動作と共に、不思議な会話が交わされる。これが正しく、ホン・サンス映画。

店を出たジュニは公園で、偶然にも元人気女優のギルス(キム・ミニ)に出会う。

場所は違えど、活躍の場から少し距離を置く現状に、2人は共通する何かを感じ取り、たちまち意気投合する。さりげないけれども、ジュニの質問は、作家的な好奇心を含んで、ちょっと深入りしてくるのが面白い。

そこに、これも偶然だが、映画監督が妻を連れて通りかかり会話に加わる。

この後の会話がホン・サンス映画では珍しく、感情が露わになる瞬間がある。でも、辛辣さというのは毎度のことでもあるから、特異なことではないのかも?

『小説家の映画』はこのように、切替わる場面ごとに、2〜5人の会話の連なりで構成された映画であり、常連と言える顔ぶれで展開する会話劇は、揺るぎないホン・サンス映画メソッドである。

ただ、敢えて言うならば、劇的なものを排除する、所謂、"余白" から想像を浮かび上がらせていくやり方には、個人的な好みの問題と言えど、別枠の集中と忍耐が必要なことを指摘しなければならない。当然、好みはわかれる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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