岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品小説家の映画 B! 余白の部分を想像するのが楽しい、ホン・サンス映画 2023年07月25日 小説家の映画 © 2022 JEONWONSA FILM CO. ALL RIGHTS RESERVED 【出演】イ・へヨン、キム・ミニ、ソ・ヨンファ、パク・ミソ、クォン・ヘヒョ、チョ・ユニ、ハ・ソングク、キ・ジュボン、イ・ユンミ、キム・シハ 【監督・脚本・製作・撮影・編集・音楽】ホン・サンス オシャレで小粋、柳ケ瀬の街中ミニシアターにピッタリ ホン・サンス監督の映画は、哲学的で難解なセリフが多いとか、誰が誰やら分からなくなってくるとか、時世や場所が何の説明もなく飛んでいくなどということはない。上映時間も短く、登場人物も多くない。 決して難解な映画ではないが、説明セリフは少なく、分かりやすい演出も派手な撮影もないので、「シーンの意図や解釈を観客に委ねる」というタイプの映画が苦手な人には、向いてないかもしれない。 私は、日常会話の延長の様なセリフのやりとりや、説明しないがためにかえって浮き上がってくる余白の部分を想像するのが大好きなので、ホン・サンス映画は大好物である。 CINEXでは、2021年7月上映の『逃げた女』以降、『あなたの顔の前に』『イントロダクション』とすべて公開している。オシャレで小粋な感じのホン・サンス映画は、柳ケ瀬の街中ミニシアターにピタッと合っている。 本作は、いままで何度か作っているモノクロ映画。カラーが前提の時代にモノクロ映画を撮るのは何らかの意図があるのだと思うが、『羅生門』とか『第三の男』などのような白と黒のグラデーションとか陰影といった表現はしてなく、コントラストは極端だが意味があるようには感じられない。 あとから調べたらカラーで撮影したものをモノクロに変換したということ。つまりモノクロを意図した撮影でなく、無造作で粗い映像までもが、色彩を観客の想像に委ねているのだ。 主人公は、著名な作家だが今はスランプ気味のジェニ(イ・ヘヨン)と、元人気俳優のギルス(キム・ミニ)。ジェニがギルスを主役に撮った映画の出来も気になるが、そこに至る途中でのジェニのブチ切れが面白い。ばったり会った映画監督から、ギルスに向かって「映画に出ないのはもったいない」としつこく言われた際に、ジェニが代わって「もったいないことはない」と大反撃にでる。 突然のハラハラ感は、やっぱりホン・サンスだった。傑作。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (8)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年05月17日 / 一月の声に歓びを刻め 三島有紀子監督が、自分自身と向き合った自伝的映画 2024年05月17日 / 一月の声に歓びを刻め 自らの体験を反映させた三島有紀子監督の渾身作 2024年05月17日 / マリア 怒りの娘 11歳の少女の眼に映る現在のニカラグア more 2020年05月27日 / 舞鶴八千代館(京都府) 日本海の港町で映画の灯を守り続ける映画館 2018年09月05日 / 塩山シネマ(山梨県) 風光明媚な山梨の桃源郷にある小さな映画館 2022年01月12日 / 静岡シネ・ギャラリー(静岡県) 静岡駅の近く…由緒あるお寺が運営する映画館 more
オシャレで小粋、柳ケ瀬の街中ミニシアターにピッタリ
ホン・サンス監督の映画は、哲学的で難解なセリフが多いとか、誰が誰やら分からなくなってくるとか、時世や場所が何の説明もなく飛んでいくなどということはない。上映時間も短く、登場人物も多くない。
決して難解な映画ではないが、説明セリフは少なく、分かりやすい演出も派手な撮影もないので、「シーンの意図や解釈を観客に委ねる」というタイプの映画が苦手な人には、向いてないかもしれない。
私は、日常会話の延長の様なセリフのやりとりや、説明しないがためにかえって浮き上がってくる余白の部分を想像するのが大好きなので、ホン・サンス映画は大好物である。
CINEXでは、2021年7月上映の『逃げた女』以降、『あなたの顔の前に』『イントロダクション』とすべて公開している。オシャレで小粋な感じのホン・サンス映画は、柳ケ瀬の街中ミニシアターにピタッと合っている。
本作は、いままで何度か作っているモノクロ映画。カラーが前提の時代にモノクロ映画を撮るのは何らかの意図があるのだと思うが、『羅生門』とか『第三の男』などのような白と黒のグラデーションとか陰影といった表現はしてなく、コントラストは極端だが意味があるようには感じられない。
あとから調べたらカラーで撮影したものをモノクロに変換したということ。つまりモノクロを意図した撮影でなく、無造作で粗い映像までもが、色彩を観客の想像に委ねているのだ。
主人公は、著名な作家だが今はスランプ気味のジェニ(イ・ヘヨン)と、元人気俳優のギルス(キム・ミニ)。ジェニがギルスを主役に撮った映画の出来も気になるが、そこに至る途中でのジェニのブチ切れが面白い。ばったり会った映画監督から、ギルスに向かって「映画に出ないのはもったいない」としつこく言われた際に、ジェニが代わって「もったいないことはない」と大反撃にでる。
突然のハラハラ感は、やっぱりホン・サンスだった。傑作。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。