岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ラッパーが目指すのはオペラ座の舞台

2023年07月18日

テノール! 人生はハーモニー

© 2021 FIRSTEP – DARKA MOVIES – STUDIOCANAL – C8 FILMS

【出演】ミシェル・ラロック、MB14、ロベルト・アラーニャ
【監督】クロード・ジディ・Jr.

寿司の出前がパリの街を走る 他にも日本いじりが出現する

主人公の青年は、フランス社会においては、あきらかな移民である。

パリが舞台。アントワーヌ(MB14)の周辺には、確固たるコミニュティが存在する。

ラッパーであるアントワーヌは、夜、街角でスマホ相手にラップ作りをしていると、警邏中の自警団らしき2人組に職質される。麻薬の売人に勘違いされただけのことなのだが、移民に対する周囲の目が如何なるものなのかが分かるエピソード。

同じく夜の街。野次馬に囲まれて喧嘩をする男2人。これは喧嘩ではなく、ストリートファイト=殴り合いの試合で、野次馬は観客。勝者となるのはアントワーヌの兄で、彼はパリに住まう身内のため、あるいは自らの生活、生きるために格闘家として身をけずる生活をしている。

そこには縄張りがあり争いも存在する。

アントワーヌは寿司屋の配達員として働いている。その日、配達に向かったのはオペラ座。

初めての場所は、高い敷居、まさに要塞や城のように、周囲は頑丈な柵に囲まれていた。

アントワーヌが開いた扉の先では、声楽の授業が行われている。寿司のデリバリーには場違いで、生徒のひとりにからかい半分に立ち退きを命令される。

そこで反発したアントワーヌは、オペラの一節を朗々と歌い上げる。思わぬ歌声に驚きを隠せない生徒たち。その中で1番の食いつきをするのは、出前主の教師マリー(ミシェル・ラロック)だった。

『テノール! 人生はハーモニー』は、アントワーヌとマリーのこの出会いによって始まる物語で、見い出された才能の可能性への挑戦、あるいは教師としてのプライドを賭けた闘いを描いている。

物語の背景である厳しい格差社会の現実を見つめつつも、ユーモアを交えた語口で深刻に暗く沈むことを避けた上手い進行だが、終盤のまとめ方が、劇中のオペラの選曲とともに、ややベタなのが少し残念。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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